▼ 2013/11/13
サン音への3つの恋のお題:どうしたら俺のものになる?/俺だけを見て/もっと愛して、奥まで愛して(これだけ未消化)
初めてあんたをちゃんと知った時から、あんたは『俺のもの』だ。今までは、他の連中が躍起になって執着してるのをくだらねえとは思っていたが、俺のそれはあんたで間違いない。事勿れ主義でいられるのはあんた以外のことだけだ。どうしたら本当に俺だけのものになるか、……今はそればかり考えている。
俺ノブレインサーキットヲスキャンスル能力ガコンナニ好マシク思エタノハ、オ前ノ脳波ヲ探ッタ時ガ初メテダ。オ前ノ思考回路ヲドノ程度俺ガ占メテイルカ、オ前自身ハ分カラナイダロウ。立身出世ヤ権力ヤラ階級ヤラヲ見ル暇モナク、マッスグニ求メラレルコトハ嫌イジャナイ。オ前ハ、俺ダケヲ見テイロ。
▼ 2014/8/18
サン音への3つの恋のお題:願い事、ひとつ/夢の中ですら思い通りにならない/ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった
「……サンダークラッカー、コンナ所で寝るナ。起きロ」
妙に耳につく声が上から降ってきた。言っていることは分からないが、この声の主は誰だか分かる。
「サウンドウェーブ」
顔が緩む。吐いた息が自分でも酒臭い。ここは俺の部屋か……?じゃあ参謀のこいつが居るわけねえよなあ。夢か。
夢。そこで妙な納得に辿り着く。俺はどんだけこいつを考えてんだ。もう一度、フロアに伏す。冷たくて心地よい。すると、誰かが肩を叩く振動ともにまた声が降ってくる。
「起きロ……ドウシヨウモない奴メ」
夢の中なんだからもっと可愛いことしてくれよ。あんたは思い通りにならねえよな。
無視するが、その振動を与える手は止まない。むしろ強くなって来ている。
「……夢の中くらいもっと優しくしてくれよ」
その途端、振動の緩急が穏やかになる。
「何ヲ言ってイルんダ」
「俺が呼んだとはいえ、俺の夢の中出てるんだからさ」
ただのリズムのいい刺激となった振動が眠気を誘う。
「……ジャア、ドウしたらイイ」
また声が降ってくる。
「どうせ夢の中でもそんなんだから、あんた、俺の言うことなんか却下すんだろ?」
いつもと同んなじ。俺だけがあんたを気にしてるだけなんだろ。
「無論ダ」
心の中と呼応するようにサウンドウェーブが言う。
「じゃあ、ただ、今だけ……」
「今だけは俺の側に居てくれ」
少しぬるまった床にほぼシステムを起動しない状態で相手の顔は見えない。どうせ夢でも…そこまで考えると、横に誰か座った気配がした。その方向へ手を伸ばすと、何かに触れる。
「…ドウシヨウモない奴メ」
俺は指先に絡んだ誰かを感じながら意識を手放した。
▼ 2014/12/14
サン音への3つの恋のお題:君が笑うと俺も嬉しいから/これって恋人繋ぎってやつ?/そんなに焦らさないで
「待テ」と呟くサウンドウェーブに口づけながらフロアに組み敷くと、肩を抑える腕に指先が絡まる。これって恋人繋ぎってやつ?こいつこんな可愛いことをすんのかと力を緩めたその途端、絡んだ手がすごい力で握られ、突然の抵抗にマウントの姿勢から飛び退く。「俺は待テ、と言ッテイル」
「待テ、はイヌでも出来ルゾ?」あからさまに不機嫌になったサウンドウェーブに怯みはするが、こちらも引けない。「そう焦らさないでくれよ」自分の声音に懇願に近い響きが含まれて聞こえるが、実際俺はこいつと居ると焦るのだ。ペースが早かろうと多忙な参謀殿と居られる時間は少ない。
「随分、俺モ好カレタモノだな」ふいにサウンドウェーブの語勢が弱まる。スキャンされたか。「そりゃ、あんたが俺のことを好きだからな」お前さん今自分がどんな顔してんのか分かってんのか?俺はその表情が嬉しくて、口の端から口付けする。奥へ進むうち、手が緩んでいくのが分かった。
▼ 2014/12/18
サン音への3つの恋のお題:永遠を信じてみたくなった/ごめん、欲情した/しらじらと明けていく夜
(これのみブログに投下しました)
しらじらと夜が明けだし、暗闇からお互いの輪郭が浮かび上がる。センサーが暗視から切り替わったからか、さっきまで気にも留めていなかった相手の表情が気になりだす。薄明かりの中で光度調節され、ぼやけている奴の顔をまじまじと見つめ始めた。
こいつもこういう顔をするのだな。
妙に真剣な、それでいて熱っぽい顔で俺の顔を覗き込んでくるサンダークラッカーを見ていて思う。基本的に無関心で事なかれで通すこの機体がーー優しげに見えて、かなり冷たいところもあり、しかし情を捨てきれないこのちぐはぐな脳波を持つ機体がーー俺をこういう表情で見てくるという事実を俺は楽しんでもいた。
こいつのこういう一面を知っているのは俺だけだし、引き出せるのも俺だけだろう。そういう無意味な独占欲を満たしてくれる。
このキスという動作に意味を求めるほど俺は愚かではないが、こうも激しく求められると何がそうまでさせるのかと思いたくもなる。
こうされているうちには意識がどうしてもサンダークラッカーに集中してしまい、こいつの脳波に眩暈を感じる。視線が熱い。
「わりい、欲情した」
ブレインの動きが鈍り出すと、サンダークラッカーが急に我に返る。
これだからこいつは嫌なのだ。
自分の感覚や衝動に夢中になっていればいいのに、ふいに俺に気を使ったりする。こいつは結局、お人好しなのか。そんな態度で居るから、お前は損をする。自分以外は他者と割り切っている癖に。モノとして扱ってしまえば、都合がいいだろうに。俺や他の奴らのように。
そこまで考えて、俺はまた思考を切り替える。
しかしこいつにモノとして扱われて、俺はそれを許せるだろうか。
「…………」
「どう、した?」
考えこめば、すぐに察して俺の様子を伺ってくる。尋ねながらも俺の輪郭に手を添えて口づけを求め、俺の返答を発声器に留まらせる。
これだからこいつは嫌なのだ。
人の不安を無意識にか嗅ぎ取ってくる。こいつがブレインスキャンを持っていないという事実が驚きだ。
情報の変化はきっと留め置けない。しかしーー
俺は今確かにこいつが好きだし、こいつは俺が好きだ。
朝もやで不安定な視覚の中、俺は永遠を信じてみたくなった。