確認癖(サン音) - 1/8

 俺は相変わらず、サウンドウェーブに振り回され続けている。
 あいつが『俺のもの』となったとはいえ、サウンドウェーブの考えていることは相変わらず読めるようになってはいない。立場が違うという点で、他のやつらが居るときに態度を変えるくらいなら俺にだって理解が出来る。しかし、二人きりの時に急に不機嫌になるのは予測不可能だ。しかもその不機嫌が、俺がぐちゃぐちゃとこいつの頭の中について考えているうちにご機嫌になったりする。
 こいつこんなキャラだったか?
 情緒が不安定な様子を見ていると、余計にこいつという機体が分からなくなってくる。以前自分がこいつを無表情・無関心・無感動の感情回路半壊野郎だと思っていたという事実が、今や受け入れられない。あのバイザーとマスクとあの鉄仮面越しでも機嫌が良いか悪いか程度は分かるようになったのが、余計に俺を混乱させる。
 少し前までろくに色恋沙汰だなんだのほうの情緒が育っていなかったからなのか。反動なのか違うのか。
 それ以上に俺を混乱させるのは、最近のサウンドウェーブの俺の論理を軽々と超えたとっぴも無い行動をとってくることだった。

「サンダークラッカー」

 いつも通りの平坦な声が俺の名前を呼ぶ。振り返ると、いつも通りのもの静かな様子でサウンドウェーブが後ろに立っていた。

「よう」

 声をかけると、振り返りざまにウィングの当たらない位置から一歩踏み込んでくる。この間隔から察するに、何か特別話したいことがあるらしい。

「今、任務ニハ当たってイナイナ?」
「おう」

 この普段無愛想の塊のような機体が自分のこれからの予定に興味を持っている。自分でもふいに浮かんだ予感に自然に意気が高まったのが分かった。しかし、淡い期待もサウンドウェーブにかかればすぐに打ち消される。

「ナラ、丁度イイ。オ前のコアダンプを保存させてクレ」
「は?」