げるげのはんしょくき(一カラ) - 2/2

次にはっきりと意識が覚醒したのは、昼過ぎだった。
行為の余熱のせいか、負担が大きかったのか、俺は起き上がることは出来ずにずっとうとうとしていた。おおよそ数時間ごとにふっと目が覚めたり上の床を誰かが歩く音や生活排水の音で意識が浮上したりすることはあったが、すぐにまた寝入ってしまい、こうして時間を気にするまでには至らなかった。
一瞬目が覚めた時にあたりが真っ暗だったこともあったので、少なくとも一晩は経っている。しかし、イチゲルゲに襲われたのが昨日だったのかは自信がない。
両親も兄弟たちも俺がいなくなっても気にも留めていないのが上の様子から分かる。子どもの頃から色々と巻き込まれてきたせいで、なにか特別なことがない限りは、数日返ってこないくらいでは流石に誰も探しもしないだろう。
いや、誰が自分の家族がイチゲルゲに床下で囲われているなんて想像するんだろうか。
イチゲルゲといえば、行為の後に俺の体を舐めまわして綺麗にした後は、ずっと側から離れず、靴下以外脱がされて何も身に着けていない俺を包むようにしていた。疲れきった体にはその温かい日向の匂いのする獣臭い毛並は心地よかった。

「アア゙!」

俺が起きたのにすぐに気がつき、イチゲルゲがご機嫌な声を上げてしっぽを巻き付けてくる。俺を逃がすつもりは毛頭ないらしい。
フッ……、あんなことまでしておいて、心配性なボーイだ。お前が俺をここに放置したとしても、まだ腰が抜けていて逃げられない。
下半身を見下ろすが、あんな異常なものを受け入れたというのに、とくにグロテスクな状態になっている部分はない。中はどうなっているか知らないが、どこかが鬱血していることもどこからか出血している様子もない。しかし、下腹部がやや痛むはともかく、いつものように背筋を伸ばすと胸が異常に痛かった。筋肉痛のような痛みや張るような胸苦しさが肋骨に張り付いている。触ると、ざわざわと変な気分になる。
身震いすると、イチゲルゲがすぐに上体にまといついた。

「ザ ムイ゙?」
「大丈夫だ」

ほぼほぼ全裸だというのに、この床下は意外と温かい。それは穴が掘られて葉が敷き詰められているだけではないらしい。よく見ると、どこから集めてきたのか青い布や服なんかがその下に幾重にも敷かれている。イチゲルゲは俺のためにこの巣を作ったと言っていたが、なるほど俺の色で飾りつけしようとしたらしい。俺を運んできたときの毛布も敷かれている。イチゲルゲが俺を襲ったのは衝動的なものではなくかなり長い間準備されてきたものと知り、俺はショックを覚えた。
イチゲルゲは本当に俺をメスに見立てていたらしい。
回復を待ってぼんやりしていると、いつの間にか上を歩く音が止んだ。物音や声が全くしないのを考えると、みんなどこかへ出かけて行ったらしい。
それにしても……腹、すいたな。
ぐるっと腹が鳴ると、側に居たイチゲルゲがのそり起き上がった。

「クチ、アゲデェ……」

口を開け、と言われて、またぞくりとする。あの脳が溶けるような緑の液体。あれを飲まされたら、またおかしくなる。
というか、今までなぜ自分はこうも平然としていられたのだろうか?家族が上に居る間に助けを呼べばとっくにここから抜け出せていたはずなのに。
でも、もし俺が助けを呼んでいたら、このイチゲルゲはどうなっていたのだろう?保健所で殺処分?……いや、まさか。

「グチ、 クチ」

反応を返せない俺に、イチゲルゲがもう一度ゆっくりと言いなおし、こちらをのぞき込んでくる。目が合うことで、俺は可能性の世界からやっと帰って来れた。

「ガラマ゙ヅ…クチ、ア ケテェ…」
「嫌だ、緑のアレは飲まない」

好かれるのはいいが、あの飲まれるような恐怖はもう二度と味わいたくない。
はっきりと拒否すると、イチゲルゲはきょとんとして見せる。
それは拒絶のショックかと思われたが、そうではないらしい。少し言葉を探すような沈黙があった後、イチゲルゲは前に飛び出た自分の片手に粘液を吐き出した。

「ダイジョ ウブ……エ゙イヨ ウ…」
「栄養?」

思ってもいなかった言葉が飛び出して来て、困惑する。
確かに緑色の粘液ではないものが滴ってはいる。危険はないから飲め、というように粘ついた手のひらを見せてきた。

「メズノ タメニ、 エイヨ゙ウ ドットイ゙タ」

メスのために栄養を取っておいた?とすると、最近こいつが大きくなったのは、こいつの言うメス――俺のためだったっていうのか?
全てが俺のためということがわかり、ぐらり、と内心が揺れる。
その手に恐る恐る顔を近づけると、イチゲルゲは俺の唇に押し当ててきた。その液体は見る限りさらさらとして、匂いはしない。見上げると、イチゲルゲは満足そうにしてこちらを見てくる。

「ア゙マイ」

――あっ。
ついに口の中に押し込まれたその液体が舌先に触れた瞬間、頭の中がはじけた。
甘い。甘露、というものはこういうものなのだろうか。何も考えられなくなっていく。

「イ゙イコ……」

イチゲルゲに食べ物を与えている時に俺がしているように。イチゲルゲが空いている方の手で俺の頭を撫でてくる。
それがたまらなく嬉しく感じるのは異常なのか?
夢中でその手のひらをなめると綺麗になったその手で俺のあご先を掴み、イチゲルゲは前にしたように俺の口の中に舌を突っ込んできた。
不思議と今回は苦しくない。むしろ、気持ち良くすらある。この後、何が飲まされるのかは俺にも分かっていたが、避けようがない。それに、なぜかさっきまであれほど嫌悪していた妙な味のする緑の液が恋しくてたまらくなっていた。

「……ェ、ぐ ぅ」

喉を精一杯開いて、流し込まれる生の匂いのする液体を飲み込む。どろりとした温かい液体がゆっくり喉を通って胃に移動していくのが分かる。少し耐性がついたのか、前回ほどの脳がすべて吹っ飛ぶような不安にかられる催淫効果は無い。それでも体温がじわじわ上がってきて、前回死ぬほど抉られたあの部分がぎゅっと締まって期待し始めたのが分かった。頭の中がぼんやりしてくる。
粘液が喉の奥に流れきると、イチゲルゲは舌を離して俺を持ち上げるようにして自分の都合のいい位置へ抱き寄せた。
火照った肌に、紫の毛がちくちくと乳首にあたり、胸元が粟立つ。そのむず痒さに腰をひねると、イチゲルゲは入り口をついに探し当てたらしい。つぷっとした沈み込む感覚があった瞬間、俺の腰を引っ張るようにして全部収めるように抉り抜けた。

「―――――――ッ!」

息が出来ない。でも緑の粘液のせいか、中は痛くない。先が臍の裏まで来ているが、前の時のように恐怖はない。これからたまらなく良いことが待っているのを、俺も俺の体もちゃんと覚えていた。

「ぅ゙ ゔ、あっ……は、 あ゙……」

入れられた瞬間からすごいピストンが始まり、イチゲルゲが中で大きくなっていく。

「す、ご い……っ!いい!お あぁああ、ぁあああっ!」

自分の貪欲さにおどろくが、最大に楽しむために、気づけばのけぞっていた。いつの間にか垂れていた涎が首筋を伝う。

「ガラマ゙ツ…ッ」

その涎をイチゲルゲが口元まで舐め上げて、そのまま口づけを交わす。押しつぶされる俺の小さい舌を必死に吸い上げようとするのが、いとおしい。

「ア゙…ズ、キィ!」

こんなに俺に発情して、腰を振ってくるその姿を見ていると、ひょっとして俺はものすごく愛されているんじゃないかと思えてくる。
俺のためにこうやって巣を作り、栄養を蓄えて、無理やりではあったがこうして痛くないように甲斐甲斐しく粘液を吐いて行為をしてくれる。
内臓いっぱいになるくらい勃起して、必死に俺のいいところを抉って。
それって、すごく満たされることなんじゃないか?

「そんな……今 い゙われたらぁ゙お゙ぉ、 おち…るぅう!!だめぇ、なのに!」

イチゲルゲが尖りきった乳首に吸い付き、子どものようにちゅうちゅうと音をたてて吸い上げる。
そんなことをしても、俺は男だから出ないのに。本当に自分のメスとして扱おうとしているのが分かる。
胸がきゅっと切なくなるのと同時に、臍の裏が熱を帯びたのが分かった。ぐちゅぐちゅとトロけていくのがわかる。中が痙攣し、俺も興奮しているのがイチゲルゲにも分かったらしい。俺の腰を固定するように持ち、ピストンを早めた。

「イ、チ ……ゔああ゙っ、ぬ、ぁあ、ひっ……ぐ!」

落、ちる落ちるおちるおちちゃううううう!!
何に落ちるのかは分からない。しかし、すがりたい一心で、俺は腰に据えられたイチゲルゲの手を引きはがし、手のひらを合わせるように握りこむ。
何かが漏れるような感覚が響くように脳に送られてきて、のみこまれ――

「……あっあっ、あ゙っ あ!ぃ、っぢゃううゔっああああああああ!!」

沸騰して溶ける脳を手放して、すべて受け入れた瞬間、ものすごい快感があたまのてっぺんから足のつま先までの全身を満たし、俺は目の前が真っ白になった。

「あ゙、……あ゙ 」

ピントがずれたように、目の前の世界がずり落ちる。

「ギ…ッ」

そうして遠のいた意識は、握りつぶす勢いで結んでいた手が握り返される感覚でまたすぐに戻ってくる。イチゲルゲの体に力が入り、途端それがふっと抜けて、俺の中に放たれた精液が温かいシャワーのように流れ込んできた。
幸運にも、瘤は中にはまた入っていなかった。びくびくと射精が行われる度に入り口に硬いものが触れる。もしかしたら、この向き合わせの体位では瘤は入れられないのかもしれない。
色々と雑多な考えが頭をよぎるが、もう、すべてがどうでもいい。
中を温かいものが満たしていく中、もう一度、快感の波が押し寄せてくるのだ。

「あ゙――――――――……」

口を開けたまま出る声を垂れ流し、腹の中に熱い液体が流れ動く感覚を楽しむ。
しかし、その声もしばらくすると喉が枯れて、ぱくぱくと空を食むことしかできなくなった。
そうこうするうちにイチゲルゲは自分自身を引き抜き、その感覚に俺が身震いすると中に溜まった精液がさがってぼたぼたと下を汚した。
でも、俺自身はまだ射精していない。
後ろから精液を垂らしながら自分のいちもつをしごくというのは、どういう状況なのだろうか。それでも、よくわからない背徳感に俺は興奮しっぱなしなのだ。
座り込んでひりつく乳首を片手で弄りながら手を上下に動かすと、限界まで高まっていたらしくすぐに欲は吐き出された。と、同時に触っていた乳首からも薄い汁が滲んできた。
懐かしいような不思議な匂いがする。

「あ、なんだこ…れっ!母……乳?」

目が覚めた時から胸が張ったような痛いような感覚が胸にあったが、このせいだっだのかと納得する。男にも乳腺があるというし、考えれば変なことじゃないとは思う。でも、なぜ?今?
まさか、俺から母なる恵みが出るようになるとは……
困惑していると、イチゲルゲが俺の胸元に顔を寄せて本当に、本当に、うれしそうに笑った。

「ガラマヅ、コレ デ マ゙マ゙ニィ…ナ゙レル」

それを見た瞬間、さきほどまでの不快感や胸苦しさではないぎゅっとした感じが体を締め付ける。
こいつは俺にメスになるよう望んでいるが、それは叶えられない。

「イチゲルゲ、何度も言っているが、俺は――」

オスなんだ。と、告げかけて、言い切れずによどませる。
いや、なぜ俺は言いよどんだんだ。早くイチゲルゲの性別の誤解を解いて、正しいイチゲルゲガールと番うように仕向けるのが俺のやるべきことだろう?イチゲルゲが『ちゃんと』したら、今なら俺も誰にも何があったか疑われずにまた日常に戻れる。言うべきだろう?
黙り込んだ俺に、イチゲルゲは不思議そうな顔をした。

「カラ゙マヅ…メス……マダァ タリナ゙イ?」

そう言うと、また手のひらの上に緑の粘液を吐きだす。
それを見た途端、口の中に生唾が浮かんだのを俺は咳払いでごまかした。

「……困ったリトルボーイだ。いや、だから俺は――」

イチゲルゲは俺の方こそ『困ったボーイ』だと言わんばかりに首を振り、口元に分泌液を寄せてくる。
なんて不毛なんだ――
一度ならず二度も情を交わした相手が、俺の性を理解してくれない。

「ノ゙ンデ……メ゙スニナ゙レル」
「俺はオスだ!」

思わずその手を払いのける。と、緑の液体は飛び散って俺の胸元にかかった。それ粘液はがどろりと流れて乳首を緑に染め、性的な興奮とともにあの先ほどまでの胸苦しさがまた始まる。

「いっ」

痛む胸をぐっと抑えると、その先からまた母乳が零れた。それを見たイチゲルゲが吸い付いて舌で粘液を擦り付け始める。

「ゴレ゙デ オス…メ゙ズニナレル゙ マ゙マ゙…ナ゙レル」

分かるでしょ、と言いたげに胸元でイチゲルゲは眉を下げて呟くように言った。

「えっ……?」
「ボクノ…ツガイ゙、ナッ テ」

イチゲルゲの言葉をかみ砕けずに時間が止まる。
オスがメスになれる?ママになれる?……もしかして、あの粘液でオスも妊娠できるようになるのか?
茫然と見つめる俺に何かを感じ取ったらしいイチゲルゲはさっと目をそらした。それにすべてを察する。

「イ、チゲルゲ~!俺はそんな話は聞いてないぞ、イチゲルゲ!飲んだらメス化するってどうことなんだ!?どうりで全身痛かったわけだよ!そういう大事なことは最初に……」

胸元をつかんで揺らしながらそこまで言いかけて、今までの会話を思い出す。
あー……言ってたな……
メスになれる、というのはこういう意味だったのかと脱力する。がっくりと地に手を着けると、イチゲルゲはしっぽを絡めてきた。

「ガラマヅゥ …オレ゙スキ…?ボク…ツガイ…カラマ゙ツガイイ゙」

泣き出しそうな寂しげな顔で乞うイチゲルゲを見上げていると、胸にキュンと来るものがある。捨て犬や捨て猫のようで、俺には放っておけない。
ああ、あの粘液には思考までメス化するのか?それとも俺にこういう趣味があっただけなのか。
ここまで来たら、あきらめるしかない。これまでも逃げ出すチャンスも本気で嫌がるチャンスもあったのだ。
ちょっとときめいたことをごまかすように前髪をかき上げる。

「俺もお前がちゃんと好きだよ」

そう言って尻尾の先をぎゅっと握ってやると、イチゲルゲは狂わんばかりに歓喜した。俺の顔に掴みかかり、べろべろと舐めしだく。

「フッ……、あんなことを二回もしておいて、ハニーは心配性だ」

が、そうしているうちに我慢できなくなったらしく、キスをしたがり始める。いい雰囲気だったはずなのに、なんとも即物的なのだろうか。
でも、ワイルドで嫌いじゃないぜ。
抱き着いて、イチゲルゲの日向のような匂いのする毛に顔をうずめる。この獣臭さにもいつの間にか落ち着くようになってしまった。

「しょうがないよな。お前は発情期だからな」

発情してだらしなくなったイチゲルゲの頬を撫でてやる。ふにゃっとその口元がほころぶ。
俺のハニーはなんて可愛いんだ。
しかし、ぐっとくるのを我慢する。今までさんざん振り回されてきたのだから、俺だって振り回してやりたかった。

「で、俺もお前にやってやりたいことがあるんだが……」

頬に添えた手をそのまま下にくだらせ、緑の毛並に隠れた割れ目をなぞってやる。

「お前の瘤、後ろからだったら、たぶんちゃんと最後まで入るから――」
「オ゙ェ」

お誘いの言葉が終わる前に、イチゲルゲは俺の顔面にあのドロドロをでろっと吐き出した。
体中がぞわぞわと鳥肌立つ。それが収まると全身から汗が噴き出す。

「ぁ、 ばぁ! か!…もうこれ、いらないのにぃ…」

せっかく、先ほど飲んだ分の効果が薄れてきたというのに、頭からかぶってしまった。これから立ち上がらなくてはならないのに、足がふらついてしまう。掴むものがない中、靴下のせいで敷き詰められた葉の上で足が滑る。俺は四肢を踏ん張り、唯一残っていた衣服である靴下をついに脱ぎ捨てた。
全身が痺れる。もう発情しているせいで、がくがくと言うことを聞かない。しかし、すでに興奮状態のイチゲルゲはお構いなしに俺を後ろから持ち上げ、勃ちあがった自分の上に落とし込んだ。

「か、 は」

勢いで体中から空気が押し出される。しかし、奥まで押し入ったイチゲルゲのものはすぐに外へずるりと引き抜かれた。息は戻るが、切なくなる。
途端、また奥まで押し込まれる。

「ぐぅゔゔううううううっ!」

ぎりぎりまで引き抜いて最奥まで突き上げる、いいところを全て擦ろうとするような後ろからのストローク。
地面に触れる足のつま先までびりびりとした快感の波が届いている。腰が砕けそうだ。もう、立ってはいられずに倒れこんで動物のように四つん這いになる。
自分が獣にまで落ちたのに、俺は興奮しっぱなしだった。

「イ、チ ……ゔああ゙っ、ぬ、ぁあ、ひっ……ぐ!」

ぐちゃぐちゃ突かれる度に、あまりの勢いにナカとイチゲルゲのものの間で空気の鳴る音がする。空気を巻き込んでピストンしているらしい。
本気で奥へ奥へと叩きつけてきている。本気でイチゲルゲが俺をメスにして孕ませようとしているのが分かった。

「ん、ぁあっ、ひ!っ い、ぃ イチ、ゲ……ぅ゙あ!」

後ろから胸を揉みしだかれ、流れ出た母乳の滴が屈んでいる俺の顔にかかる。
臍の裏のじんじんとする部分にイチゲルゲの先が当たると、ストロークが内臓を裏返すような勢いから奥を開くようにぐりぐりと押すものに変わった。

「あああああああっ!!?深…いぃいっ!!」

出したことのないような甲高い声が自分の声帯から絞り出される。それに驚いて口を押えるが、その腕をイチゲルゲが掴んで後ろにまとめ上げた。
全体重バランスの中心が、イチゲルゲとつながる部分に集中する。
イチゲルゲの力はもう俺よりずっと強いのは分かっていたが、突き上げられて腰が飛び跳ねるように宙に浮かせられるほどとは知らなかった。ふわっと体が飛び跳ねたことに驚く。が、途端、重力のまま叩きつけられて奥をごりっと抉られる。許容範囲以上の快感がそのまま背骨を通って脳まで登ってくる。
あ、すごいのがく、る!

「っ 、ぁん!……あ!あ!ぁああっ!!」

目がちかちかし、自分が絶頂を迎えたのが分かった。
しかし、いつもと同じように、俺がイッたところで終わるわけではない。
きちんと最奥まで届いているか確かめるように、イチゲルゲはしっぽで腹を撫でる。その振動が肉を挟んだ内側まできちんと届き、のぼりつめたばかりの敏感な体が悲鳴をあげる。

「、や!そ…れ だ、めぇ!!ん、ナ カ…ごりごり、す!のぉぁあ!」

ないてもさけんでも、イチゲルゲがやめたことはない。
撫でるだけだった尻尾がふいに腹部をぎゅっとおし、でんげきがからだをはしった。

「またい゙ぐぅううううううう!!」

みじかいあいだに、れんぞくしていくなんていままであったか?
不安になる。でも、怖いけど、もう怖くない。
息も絶え絶え、腰をよじって必死にイチゲルゲに口づけをねだる。
もう、この怪獣が、愛おしくていとおしくてしようがない。イチゲルゲがメスになれると言ったとおり、俺はもうこいつのメスになってしまった。
もっと受け入れようとイチゲルゲに腰を寄せると、入り口の近くでイチゲルゲのペニスが大きくなっているのが分かった。
瘤だ。

「イ、チ……お前も、 も、ぁ、イきたいのか?おれ、 にだし、ぃたいのか?」

必死に腰を振りながら目をぎゅっとつぶったイチゲルゲが、こくこくと頭を縦に振った。その可愛さに胸がきゅっとなる。
この愛しい生き物の、ママになってやりたくなる。
俺は自分から腰を振り、自分の中に膨らみつつある瘤を収めた。

「だし、て!……ナカ、 ほしい!」
「ア゙ア!」

本当の番いになったことに、イチゲルゲが歓喜の声をあげる。
中でこぶがおおきくなり、つけねのうらのいいところをぎゅっとおしはじめる。

「―――――ッ!」

クライマックスに身震いするが、その絶頂を超える次の快感がすぐに押しよせた。

「……!!…………!」

とける、とける、とけちゃう――!

「あああ、あつっ、いいいいいい い!……!!」

完全に蓋をされた状態で、熱いものを中に叩きつけられて、頭が真っ白になる。
なんでこんなにあついんだ?
風呂やシャワーのようだと感じたそれが、今は俺の奥で暴れている。しかも、量が段違いに多い。中から腹が張る感覚が苦しいが、それ以上に充足感が俺の全身を波打っていた。いつのまにか射精していたらしい。胸からつっと滴っている母乳と混ざり、腹の上もぐちゃぐちゃになっている。
イキぐるい、という言葉が足りない頭をよぎった。

「あ、ぁ――――――――……」

体が耐えられずに前に垂れる。と、イチゲルゲは俺の腰を掴んで、体の向きを自分の方に向けた。

「ぎぃ、っ――!――――!」

瘤が内臓をえぐり、ちぎれるような痛みが襲う。それでも、ぴったりとつけられた奥がぐりぐりと刺激される。何度目かの絶頂が脳を襲い、俺はもう声も出なかった。
俺の顔は今、ぐちゃぐちゃなのだろう。イチゲルゲは何度も絶えず訪れる絶頂に浸っている俺の顔の汗と涙を舐めた。射精が止まらない興奮で息は荒いが、愛情深い視線でこちらを見下ろしてくる。

「ガ ラマ゙ツ」

口を開けろ、とその長い舌が俺の唇を沿う。大人しく口を開くと、寄せてきた口からイチゲルゲが『栄養』と呼んだ甘い液体を口に含ませてくる。これで健康なこどもを孕んで産めとでも言っているのだろうか。
――いいだろう。俺をメスにまでしたんだ。もう、最後まで受け取ってやる。
了解の言葉の代わりに舌先を吸うと、イチゲルゲは喜び、瘤をまた膨らませ始めた。
これだけ出したら、流石に孕んでいるだろうか。もし孕まなかったとしても、番いになったイチゲルゲが俺を解放してくれそうにない。でも、これでイチゲルゲのベイビーを妊娠したら、あいつらになんて言おう。
紫のもふもふとした毛に顔をうずめて、温かい獣臭いにおいを吸い込む。
でも、もうどうでもいい。こいつは俺を愛してくれてるし、俺もこいつを愛してる。人生なんてそんなものだ。どうとでもなるだろう。
俺は瘤が快感を与え続ける間中、熱い液体が中を満たしていくのを感じながら、愛しい怪獣からの甘い口づけを受け取り続けた。