サンクラしょたんぱ(サン音)

「コウイウ時に、オ前が居ルと便利ダナ」

 その群青の機体は、ベッドから見上げながら、暗に俺のことを棒要員だと言ってくる。
 上官に舐められても仕方ないから腹立たしくはない。

「……俺にそれの同意を求めねえで下さいよ」

 しかし、その姿がちんちくりんであるからには落ち着かない。ベッドの端に座わり足を届かない床に向かって重力のままに動かしている姿は幼い。
 だが、本人曰くは、

「中身はソノママダと何度言ったら理解出来るノカ?」

 らしい。

「言葉の意味はちゃんと理解してますけどね」

 分かっていても、受け入れられない。
 いつも通り低脳だなんだと罵詈雑言を飛ばしてくるが、それがまるで似合っていないのだ。
 ついには、横で突っ立ってぼんやりとしている俺に痺れを切らしたらしく、ベッドの上に仰向けに寝転がる。こんな姿は見たことがない。
 本人がいつも使っているベッドに、やはりその小ささは不釣り合いだった。

「ソレデ。ヤるのか?それとも、コンナ俺とじゃヤれナイのか?ドッチだ」

 サンダークラッカー、と俺の名前を少し高い声が問いかけながら呼ぶ。
 まあ、頼まれたし、この機体のことは嫌いじゃない、からやることにはやるんで全く構わないんだが。

「そんなに慌ててすることでもじゃないんじゃ……」
「コノ体は便利なコトも多いが、デストロンの情報参謀としてはCPUが低スギる!ブレインスキャンも潜入もままならナイのは耐エラレン!」

 そう明らかにイライラした姿を見ると、能力云々は置いといて、確かにそうだよなあと思う。些細なことにもすぐ反応し、思ったことが口からほとんど出ている。いつもは何考えてんだろうと思っていたシャープな横顔は、今やむくれてまあるく膨れている。
 しょうがねえなあ。
 倒れこんだその横に俺も腰を下ろし、膨れっ面を突く。

「俺に幼児趣味はねえんですよ。だからあんたも俺が協力しやすいように、その気にくらいさせてみて下さいよ」

 ねえ、そういうと、どうしていいの分からないらしく、ただそのバイザーとマスクを外して俺の膝の上にのしかかって来た。

「サンダークラッカー、……シてくれ」

 そう言ってから、顔を赤らめて逸らす様や表情の作り方は、確かに『サウンドウェーブ』だった。
 ああ、ちゃんとあのひとだ。
 別に奴さんの見た目だけが好きなわけではないし、自分でもちゃんと分かってはいたんだが、あの姿と繋がらなかった。幼いが確かに『サウンドウェーブ』。そう思うと不思議なことに、急に欲が自分の中にこみ上げて来るのがわかる。
 マットに引き倒すと、腕の中で幼い機体がぎゅっと縮こまるのがわかった。重いからか。機体差が怖いからか。
 その緊張を解すように、強張っている口元に口づける。

「ん、む、ぅ」

 その小さな体では排気するにも、少ない空気しか取り込めないらしく機熱が上がっていく。鼻と喉から漏れる音が新鮮で、それを聞きたいがためにわざと狭い口内の中に舌を押し込める。まるで生物が格下を捕食しているようで、相手を圧しているのが分かってはいるのだが……
 ふいにされるがままだったサウンドウェーブにくちびるを噛まれ、口を離す。どちらのものともとれない口内分泌液が流れ出たその唇は、てらてらと光っていた。

「……ト、ばしスギだ、馬…鹿」

 絶え絶えにそう言う姿は、征服欲をひどく煽ってくる。

「あんたが望んだことでしょうが。続けます?それとも、今回はここでやめときます?」

 そうプライドを掻き立てると、サウンドウェーブはこちらに背を向けて俯く。

「好キにシロ」

 その動作がいつも通りで、俺は思わず吹き出しそうになるのを堪える。その代わり、俺はその体を引き寄せた。
 後頭部から首筋にかけてキスを落としながら、指を腹部から下へ辿らせる。指先で目当てのコネクタのハッチを擦ると、腕の中で小さな背中が身震いしたのがわかった。とんとんと叩いてみせると、そこが開かれる。
 すでに半分立ち上がっているのが手の中で分かった。

「こんなに小さくても、勃つもんは勃つんですね。こっちの方も、」

 硬度と質量を少し増したコネクタを弄りながら、もっと奥の方を開けるように促す。
 ……やはり、狭まいな。
 機体が幼くなると、レセプタも『幼く』なってしまうらしい。未開のそこに指を入れてみるが、中の道は固い。でも、

「まあ、あんたを開発できるってのは役得ですかね」
「ド、ウイウ、意味だ?」
「そのままの意味です」

 それから少し間があって、腕の中の機熱がかっと高くなる。
 何かを言おうと振りむいたらしいその口を後ろから塞ぎながら、俺は構わず中を解いていく。CPUが低いと言っていたのは本当で、ある一定以上の刺激を受けると何も考えられなくなるらしく、言いかけた言葉はついに出ず、その口元はただただ排気しずらそうに喘いでいる。
 思ったとおり、高負担らしい。慌てて済ますことじゃないと思ってはいたが、さっさと終わらすに限るのかもしれない。
 しばらく責め続けていると、レセプタの中が発達してきたらしく刺激に対して反応してくるようになった。
 そろそろいいかな。
 後ろ向きのままで表情は分からないが、手の中のコネクタもレセプタの中もそろそろという感じがある。前後不覚になっている間に入れて、さっさと済ますか。緊張させないように、静かに自らのハッチを開き、入り口にあてがう。
 先を押し込んだ瞬間、その我に返ったらしい幼い機体が吼えた。

「痛い!!い、たいいたい、たい、たのむか、ら!さんだっ、クラッカー!ぬい、……ひぇ!」

 中が大きく広く歪む痛みに絶叫する。広がる痛みは凄まじいものらしく、振り向いた顔は溢れてきた洗浄液でぐちゃぐちゃになっていた。
その勢いに飲まれて、思わずそこから引き抜く。
 それすらも痛かったらしく、声にならない叫びが喉から聞えた。混乱しているらしく、目をぎょろつかさせている姿は痛々しい。
 慌てて体をこちらに向けさせ、抱きしめる。

「すまねえ、あんたを傷つけるつもりはなかったんだが……」

 反応の無い脱力した機体の腹部をなでる。

「大丈夫です?」

 とめどなく零れる液体を指ですくい、オプティックを覗き込む。
 すると、その瞼がきゅっと閉じた。

「……ダイ、じょうぶだ。オ前のスキなように、つづけろ」

 そんなこと言われても、俺自身がその白い太腿に触れれば、震えている。
 ここで止めれば、それはそれでこいつは怒るのだろう。
 仕方なく、萎えたコネクタを弄ってやり、レセプタの入り口に沿って俺のコネクタを擦り付ける。これなら負担も無い。繰り返すうちに消え去りかけた熱も戻ってきたらしく、目を閉じままではあるが小さい喘ぎ声が聞えてくる。俺もやっと安堵する。
 簡単にネジ折れそうな白い太腿に、俺の先走りが垂れていく。その太さは俺の腕の太さとそれほど変わらない。
 初めから無理だったのだ。こいつがはやく元に戻りたい気持ちも分からんでもないが、いつもとは違うんだ。俺じゃあ機体差が――。
 そこまで考えて、はっとする。いくら機体やキャパが幼くとも、こいつは『サウンドウェーブ』だ。そんなことは分かっていただろう。それでも、こいつは俺を選んだのだ。

「サウンドウェーブ」
「ーーッ、」

 その瞬間、何も出ない軽い絶頂を迎えたらしい。機体が強張り、脱力する。
 大丈夫かと心配していると、急にその閉じられた瞼が開けられた。

「……今日、初メテ、名前ヲ呼んだナ」

 そうだっただろうか。確かに、ずっと分かってはいてもあまり事実を受け入れられずにはいたが。

「何度言ッタラ分かる?俺は、俺ダ」

 違ウカ?
 今日はそういえば何回もこんなことを言ってくる。ブレインを遡れば、文脈は何にせよあの尊大なサウンドウェーブが「コンナ俺とじゃヤれナイのか」と聞いてきている。こいつも、ブレインスキャンは出来ないしで不安だったのかもしれない。
 ふとそう思った。

「サウンドウェーブ」
「ドウシ、タ?」

 太腿とレセプタに擦り付けていたものが熱を孕んでくる。
 俺だって生殺しだ。繋がりたい。

「入れてもいいか?」

 すると、腕の中でサウンドウェーブが俺を押しのけようと拳を打ってくる。まだ心の準備が足りていないらしい。しかし体位のせいもあるのか、解れてきていたそこは少し態勢を変えるだけで、さっきと違ってすんなりと入ってしまう。
 その途端、今度はこれ以上はダメだと引き寄せるようにサウンドウェーブが小さい機体を絡めてくる。

「あ、入れナガラ、ぁ、言うナ、このテイノウ!」

 レセプタの中は先ほどのこっちを潰してくるような圧迫感は無く、やっとではあるが押し入れられる。流石に全部は入らないが、中が開ききったようだった。
 狭いなりにコネクタを沈めきると、罪悪感と欲を満たした達成感が入り混じる。

「ごめんな、サウンドウェーブ。ちゃんと、すきだぜ」
「ナゼ、いま、ァ、ソンッ……ナ…!」

 小さい機体なだけあり、入るはずのなかったものを極限まで飲み込んだのが腹部が丸く伸びているから分かる。
 そこをぐりぐり指で押すと、サウンドウェーブの機体が大きくはねた。
 一応は感じ始めているらしい。

「サウンドウェーブ」
「そんぁあ!ナマ、ェ、よぶなぁ……ば、か!」

 腰を動かし始めながら、コネクタをしごいてやると全身を捩り始める。

「ウ、ぁあ、ーーっ」

 手の中に粘度の薄いオイルが染み出した。
 ああ、こっちも未発達なのか。
 もうサウンドウェーブのキャパシティーは超えてしまったらしく、かるくイッてしまったのだろう。目から鼻から口からだらしなく何かの液体やらオイルが漏れている。
 いとおしい、くるおしい。
 ナカに押し付けて、つよく抱きしめる。
 やっぱり、元の方が好きだけど、こっちも思えば可愛かったな。少しもったないことをした。

「サウンド、ウェーブ」

 自分の欲を吐き出そうと速度を速める中、俺はそう少しだけ後悔した。