あの後どうなったのかは、語るのにもただただ面倒くさいばかりだ。要約すれば簡単だが、それ以上にフランスが今日は特に面倒くさいのだ。俺には愛が足りないだことの、可愛くないだことの、恋人としての情緒がどうのこうのに加えて、バスマットが片付けていなかったことだのをあいつが朝飯を食い終える間、黙って聞いていなくてはならなかった。
ここまで言われれば、俺だって胸に手を当てて考えるくらいはする。昨晩の俺の態度はまぁ……OKだった筈だからカウントはしない。強いて言えば、あいつの誕生日に仕事が入って会えなかったことをまだ根に持っているようだった。
それについては、あいつと同意のことだったのに。
「……で、俺はどうすればいいんだ?男2人で白い目に晒されながら遊園地にでもデートに行くか?」
そう言いながら、とんだネバーランドだと内心笑ってしまう。フランスときたら唇を噛んでこっちを睨んだが、実際そのとおりだと分かってはいるようだ。 こういう時のフランスはとことん女々しくて正直うっとおしい。いつもは余裕綽々で大人で格好…とにかく、なんだか子どもっぽい。もちろん俺しか見ることが出来ない訳だから優越感はあるが。
「じゃあ、お前は何をしたいんだ?」
苛立ちを隠せない俺に、フランスが返したのは意外な言葉だった。
「…坊ちゃんと買い物に行って、その後帰って来たら、アフタヌーンティーして買ってきたのでお兄さんが料理して、ワイン飲みながら食べたい」
思わずジョークか?と吹き出しそうになるが、今の話の流れからすると本当にフランスしたいことなのだろう。でも良いのか?そんな普段と同じで。だったらそんなに朝から怒らなくてもいいだろフランス。何で今日はそんなにヒステリーかましてるんだお前。皮肉を込めた言葉が頭に浮かび口を開きかけては閉じる。そんな台詞を言ったら、またフランスの機嫌が悪くなるだろうのは分かっていた。
だから黙ってやる。
「フランス、お前俺のことを頑なだなんて言うけどさ」
「でも、坊ちゃんも変に冒険するよりはこういうのの方が好きでしょう?」
まあなと返事をすることさえしなかったがフランスのにやりと俯いて笑った顔を見れば、分かっているのだろう。
買われてしまった売れてしまった7月の午後に向かってけだるく進む時計の秒針を横目に
「『たまには』こんな休日も良いんじゃないか?」
皮肉を込めて笑うと、向かいのフランスから微笑み返される。庭の手入れをしようと思っていた大事な休日の午後のひと時をふいにしたって良い。いつもの通りでまったく構わない。なんとなくそう思えた。