七月の午後を売る(仏英) - 1/2

ベーグルを半分に手で裂いて、トースターに放り込む。バターナイフとバターを用意して、タイマーに飛び上がったこんがりと焼けたベーグルに塗る。バターが溶けたところでそれをほおばって、ミルクティを流し込めば、口の中はまろやかな天国へと変わる。
遅めな朝の食事を満喫していると、ガウンのままのフランスがリビングに飛び込んできた。

「んだよそんな格好で。まだ寝ててもいいんだぞ」
「おはよう坊ちゃん。いや、時間的にも寝るのはもういいでしょ」

ふうん、とパン皿の下に敷いた今朝の新聞に目を落とす。
しかし不満があるようで、そうじゃなくてと食ってかかってきた。話が長くなるな。腹をくくると、やはりフランスはテーブルを挟んだ椅子に腰を下ろした。
長い金髪が荒々しくかきあげられる。

「何で俺が起きた時に、ベッドの中に居ないのよ。お兄さん起きがけにがっかりしちゃったよ。起きたら…こう…腕の中に恋人がいるっていうシチュエーションのロマンが坊ちゃんには分からないのかね?」

向かいの背もたれのない椅子の上でフランスが吠えた。

「永遠に分かんねーよ、馬鹿。お前ベーグルは何個いるんだ?」
「二個は欲しいかな。ってそうじゃなくてさ」

ああもう朝からめんどうくさい。
しかしここまで絡まれれば、少しは胸に手を当てて思案したりはする。昨日の夜は……まぁご機嫌だったはず、だから、やはりこの間のことだろう。誕生日に一緒に過ごせなかったこと。考えているのが煩わしい。

「ああ、もうベーグルも焼いといてやるし後で聞いてやるから、早くシャワーあびてこいよ馬鹿!」

俺は少しだけ問題を先延ばしにした。