理由(仏英)

味音痴、メシマズ、そうからかわれ続けているイギリスは、味が分からないと言われる割に、俺の料理をよく食べてくれる。昔から色んな料理を食わせてきたから、俺の味付けに慣れているのが理由だとは思うけれど。

「イギリスは何だかんだでいつも残さず食べてくれるから、お兄さんも作りがあるんだよね」

ゆっくりと音を立てずに食べるイギリスに満足して、そうぼやいた。
食べてくれるやつがいるのはとても幸せなことだ。マナーに煩いイギリスらしい会話以外はとても静かな食事。それでも俺はその落ち着く時間が結構気に入っていた。百年、千年とずっと隣にいたせいだろうか。
こう言葉にすると、イギリスは怪訝な顔をするけれど。

「……いやに急に、だな」
「いやこのこと自体は前々から思ってたんだけど、坊ちゃんは俺の料理好きだよなーと自己確認しただけ」
「なんだそんなことか」
「まぁ、料理目当てでも、あんまり人を訪ねない坊ちゃんが遊びにくるだけよしとするか」

目線を下げ自虐的に話を切り上げると、イギリスが小さく驚いた声を上げた。

「それは少し違う」

顔を上げると、ナフキンで拭うイギリスの口元が笑っているのが分かった。

「好きなやつの作った料理が好きなのは当たり前だろ」