汗ばんで寝苦しそうにしている首元のワイシャツのボタンを外してやる。この暑いのに、きちんと一番上まで律儀に止めているのがイギリスらしくて。笑ってしまった。
「…何、笑ってんだよ」
ふと見れば、先ほどまで固く閉じていた睫毛の間から緑色の目がぎょろりとこっちを睨んでいた。こんばんは、坊っちゃん。起きたばかりだからなのか、目は鋭くともなんだかぼんやりしたような顔をしている。それから生徒会室のソファの上で馬乗りになられているのを認識したのか、もぞもぞと動きだした。
「お兄さんは坊っちゃんとじゃれたい気分なんだけどな」
「暑くるしいことこの上ないな」
甘えてみても、それを一喝されて、……可愛くない。せっかくちょっとこっちは気分が変わってきたのに。
「汗で、涼しくなるっていうけどね」
そういって首筋にキスを落とそうと顔を近づけると、ぎゅうっと延びてきた手に距離を離された。痛いと叫べば、ぱっと離されるものの、首の筋が軋む。
「急に、触るんじゃねぇよばかぁ!……その、俺、今、汗……臭いと思うし、」
かあっと空気が暑くなる。紅潮する顔は目を逸らせて、恥ずかしいと訴える。
「イギリス、ほんとに嫌?」
捩らせた体にキスをすると、ああもう勝手にしろ!
観念したようにそう叫ばれた。