「ベベちゃん、何を拗ねてるのかフランスお兄さんに教えて欲しいな」
フランスは時々、俺のことを──赤ちゃんと言う意味だが──ベベなんて呼ぶことがある。ベイビーなんて呼ばれるほど可愛い歳ではないから、もちろん彼からの嫌がらせの意味で。
しかも、俺が童顔なのを気にしているのを知ったうえで、だ。
「だからその言い方、止めろって言ってるだろ!」
怒声を浴びせても、悪びれもしない。こうも動じないと、イギリスは自分がガキに思えてくる。フランスには余裕がありすぎるからだ。
要はそうなのである。
年もそんなに離れていないし、身長だって一緒だ。だけど一緒に並ぶと、フランスがやはり精神的に自分より大人であるのを痛感する。それと同時に、自分が子供っぽいと感じる劣等感の様なものがいつも込み上げてくる。
いつもは悪ふざけをしてくるが、やはり根は大人で、紳士などと呼ばれている自分にも持っていない物腰を知っている。
瞼はゆっくりと閉じたり開いたり。視線は流れるように動く。フランスのその目線がイギリスは好きだった。
あ、でも凄くたまに子供みたいに笑う時もあるよな。
子供のように自分に向かってフランスが笑うのを記憶から引っ張り出す。そういえばフランスがああいうふうに笑うのは俺と一緒の時にしか見たことがない。
よく考えると、ベベと呼ぶのも二人の時だけだ。
……頬杖をしながら、フランスを見つめる自分の顔が赤くなるのが分かった。
「イギリス、どうした」
「何でもねーよ」
その赤さを悟られないように、そっぽを向く。
「ねえ、ベベちゃん」
俺だけに、
なら呼ばせてやらなくもない。