ブーツが踏みしめる森の湿った土の匂いを吸い込むと、体の底からすうっと何かがたちこめる気がする。 スウェーデンは木の根に座って、フィンランドがかがんで森の宝物採取をしているのを見ていた。パリッとしたワイシャツの上のエプロンは裾をまとめられ、大きなポケットの役割でフィンランドに集められたきれいな色のきのこなどをなくさないように抱え込んでいる。
「スーさん、見て下さいよ」
ほら。これは今夜の温かいスープの中身になれますね。片手に見せたベージュのきのこには有り余るほどに、嬉しそうにフィンランドは言う。
そんなフィンランドに思わず真っすぐにしていた口の端を緩めると、もう片方の手で押さえられていたエプロンがぱっと離されて正常の位置に戻り、その間に入っていたものたちがぽとぽと地面に落ちた。
落としてしまったものを拾うためにスウェーデンがかがむと、呆けていたフィンランドも自分が起こしたその場の状況にやっと気づいた様子で、あっと声を上げて拾う作業に加わった。
「ス、スーさんってなんだか、急に笑うんですね。僕ちょっと驚いちゃいました……なーんて」
スウェーデンがいつもの仏頂面に戻ったのをちらりと見て、フィンランドは会話の語気をびくびくしながら下げた。
スウェーデンにしてみればそう指摘されたのが彼にとっては意識をしていないことだったらしく、きのこを拾いながら眉根を寄せた思案顔であったため、その表情を見たフィンランドは余計、自分が失礼なことを言ってしまったのではないかと心配にからされた。
今度は、スウェーデンがその表情にまた考えるような顔になってしまったが、すぐにまた幽か微笑んで、立ち上がりざまに泣きそうになっているフィンランドの頭をぽんぽんと叩いてやった。
「そ?」
笑っているのが伝わったのか、またフィンランドの顔に笑顔が浮かんでくる。
「……今日は、サーモンとマッシュルームのスープにしましょうか!」
元気に自分の前を歩き出したフィンランドに、スウェーデンは小さくほっと静かなため息をつくが、それは森の天井の梢が風になびく音にかき消された。