雨の降る午後の校舎に残っているような生徒は少なく、人気のない廊下を進んだ先…生徒会の少数メンバーだけが唯一、雨以外の音をたてていた。が、2人だけに残された彼らも仕事を終わらせて帰路につくらしかった。
音も立てない雨が、がらんどうのだだっ広い学園を静かに濡らしている。
フランスが安っぽいビニール傘を傘立てから引き抜くと、空っぽになった筒にイギリスが眉毛を寄せた。
「…置き傘盗られた」
「あのモスグリーンのを持ってく奴がいたとはねぇ」
あれ目立つのに。そう言って人事のような態度でいたかったが、イギリスが微妙な顔でじっと傘立ての空洞を見つめているのを見て、フランスはため息をつく。
雨で横にふんわりと広がった金髪を後ろで束ねた。
「イギリス、入る?」
しょうがないので開いた傘を斜めに傾けてやると、まだ怒ったようなむすっとした顔で左側に並んだ。
「途中のコンビニで傘買うまで、だ」
「本当に可愛くねぇな」