本屋に入って十数分。ぶらりと店内を一周して小説を一冊だけ買う。ちょっとだけ雑誌も見る。
「早かったね」
その間に、あいつの手にはランポーネとチョッコラートのジェラートがもりもりと乗っかったコーンが握られていた。
ピンクと茶色の混ざったものが垂れかかっている。
「まだ寒いのに、よくそんなもん食えんなお前」
「えー、寒いからおいしーんだよ」
春めいてきたとは言え、肌寒い風が強くびゅーびゅー吹いている。ぞっとしながら薄手のコートを手繰り寄せた。
すると、そうすることが分かっていたかのようにヴェネチアーノからは温かいコーヒーが入ったカップが手渡された。
何も言わずに、受け取ったカップのプラスチック蓋のプルタブを返して口をつける。が、あまりの熱さに咽せてしまった。横から手渡されたハンカチで口を押さえて一呼吸。
流石にありがとうと言うと、
「俺のポケットは、魔法のポケットだからね!」
こちらこそ、の変わりにポケットの変な秘密をカムアウトされた。
俺はそれを無視し、
春先のコートではまだ寒く、温かい飲み物は熱すぎるこの時期の外に早く別れを告げて、快適な家の中でお前が作ったパスタを食べたいとこぼした。
腹壊すなよ、コノヤロー。