彼の部屋はいつも暖かい。
太陽、と言う言葉が一番側にあるような彼はキッチンの椅子に座って、梨の皮を剥いている。僕はその手の梨をぼうっと見ていた。
「ここはいつも暖かいんだね」
そうか?と初めてそんなことを言われたというような表情で彼は笑った。太陽のような人だ。と思う。この部屋のように彼もいつもあたたかい。
「冬はもちろん寒いんけどな。まぁ…ロシアんとこの方が、多分もっとずっと寒いんやろな」
フランスがナポ公に愚痴ってたわ。
かかか、そんな風に僕のうちの冬将軍を笑い飛ばすのは彼くらいだろう。僕は苦笑いをした。
「あとは、情熱やろな」
「情熱…」
「うちは血気盛んな奴が多いから、熱が移るんとちゃうか?」
反芻すると、当たり前のように非科学的なことを言い返される。彼の理論ではアリらしい。
「じゃあ、僕も熱を注がれたら、あったかくなるのかな?」
意地悪を言うと、言われるまで気づかなかったようで、彼はびっくりしたように梨の皮むきの手を止めて、じっとこちらを見つめた。
「せやな。なるんとちゃうか」
「え?」
どきり心臓が胸から落ちてしまうくらいに飛び跳ねる。すぐさま、ちゅ、っとくすぐったげでソフトなキスが頬にふれた。
ほら、顔が赤くなったで。そういって彼がまあるく笑った。僕は熱が移るのになれていないから、ちょっと刺激が強いよ太陽さん。
先ほどより温度が各段に上がった熱を持ち主に移し返すべく、僕は薄く目を閉じた。