革の手袋というのは滑らかだが、指先は堅い。
とんとんと指先で太股を叩かれる感覚は分かる。しかしその指が入って行ったところがどれくらいクリームで「濡れて」るのかという感覚は薄い。しかし、熱で溶けて肌に一筋伝ったことだけは敏感に不快だと感じた。
「痛くないのか」
ルートが聞く。俺は首を横に振る。
「分からねえ、よ、んなの」
分からないという言葉が一番適切であるように思えた。
俺の体なのに。
いつもは使わないその場所の感覚が研ぎ澄まされて行き、そこは自分ではないという不思議な妄想に陥りそうになってくる。見つめる相手の手首の太い筋がぴくりと動いて、中で指を曲げたのが分かった。
「 」
女のよがり声が男の俺から出る。
指が、その先に当たったところを中心にめくるような出し入れが始まる。今まで分からなかった感覚が、俺の中で急に目を覚ませて浮き彫りになった。
「あっ、ああっルート、それヤバいっああっ」
羞恥に顔を隠す。自分のものは完全に起ち上がっていた。
肌の熱が伝わらない革手袋のせいで、自分が誰に裸体をさらけ出して犯されてるのか分からない怖さがあった。
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中指をちょうど曲げたところに、指先にこりこりとして引っかかるものがあったのだが、今はどこにあるのか分からないほどに中が発達してきていた。
「ああっあっ、意識が、とぶっ、ああっもうダメだルートっ」
ふるふると快感の波に喉を震わせながら嬌声をあげる兄さんは、耳まで顔を赤くしてよがっている。クリームはもうほとんど溶けこぼれていたが、黒い革手袋はすんなりと白い肌の間にある、中の、奥にまで入っていった。
いつも隣にいた兄の体が俺によって変わってく。
目の前の事実が急に不安になり、そこから指を抜いて、脱力した兄さんの様子を伺った。
「大丈夫か?」
視線は下からこちらに向かないまま、そうだと言うように頭が頷かれた。
それはいつもの日常に近く、この異常な空間で。少しほっとしたつかの間。何を思ったのか、兄さんは俺のズボンのベルトに手をかけた。
何をするんだと目を見張るが、こちらだって、すでにもう起っている。
それをその対象の兄さんに見られる気まずさに目をそらすと、向こうから体を押し倒された。
***
押し倒された俺に向かって、名前が、初めて聞くような甘い声で呼ばれる。
「ルートヴィッヒ」
上に跨っている兄さんから、熱い視線がこちらに下る。もういいかと乞うように見つめた兄さんに、俺はこれから彼が何をしようとしているのかを悟った。
「兄さん、まだ心の準備が」
そのAの音の形に開いた口に、答えだと言わんばかりに押し付けられた唇から舌が入ってくる。戸惑った俺を無視してそのまま腰が落とされた。
「あああああっ」
入っていた舌が、弓反りとなった背筋と共に離れ、開かれていた足が急に縮こまれて俺の腰の上に重なった。
さっきまで広がろうとしていた中が、締めつけるように閉じ、あまりの感覚の違いに眩暈がする。ぎゅっと閉じられた股を開かせて、それを緩和させた。
体重によって下まで下った彼の腰を支えてやると自分と兄さんが本当に繋がったのが見える。へその下を圧迫すると、確かに固くなっていて、彼が上で痛いと喚いた。
「すまない、兄さん」
白い腹の肌を黒い手袋の手で優しく撫でると、
「兄さんじゃなくてギルベルトだ」
泣き出しそうな潤んだ目で、ギルベルトが笑った。
手を添えた細められた目からは、確かに訳のわからない涙が、小さく粒々とこぼれ始めていた。
***
動かされている腰の上に置かれた革の手袋をつけた手が、上気した肌にぺたりついていた。
「あっああっんあっ」
相変わらず頭の悪い声がする。
自分で動くこともままならずにルートに揺さぶられているのは恥ずかしいが、もう背筋からなにからぐにゃぐにゃになっていくような気がして自分の足で体勢を保っていることが出来なかった。それが分かっていて、ルートヴィッヒも動いてくれているのだろう。
俺が頭を掴んでいるせいで、いつもはきちんとオールバックにされている髪型が崩れていく。
じっとその今は少し充血して赤くなっている青色の目を見つめると、俺の赤いそれが薄いブルーに映り込んで真赤く見えだす。偽物のルビーを眼にはめたような怪しい安っぽさが光っていた。
俺はそれをとても綺麗だと思う。
今、俺の可愛い弟が、俺だけを見ていることの証明だ。
独占する喜びを感じながら、俺はルートの瞳に唇を押しあてた。