シロツメクサ(サン音)

「あんた、ちょうちょ追っかけたり、花摘んだり……荷物届ける気、あるんです?」

ふと、隣に座り込んでシロツメクサで花輪を編むサウンドウェーブこと赤ずきんに尋ねる。邪魔をするのが役目の狼らしからぬ発言である。が、発言者が俺ということで、赤ずきんはただ寝転んでいる俺に一瞥を投げて呆れたようにため息をついた。

「で、実際どうなんです?」
「オ前ハ、実ニ短絡的ナ奴ダナ」

暴言を吐きながら、赤ずきんは俺が話しかけたことで手を止めた花輪の続きを再開させる。

「アレハ子ドモハ斯クヤアラン、ト求メラレテイルカラ俺モ好キ勝手ニシテイルダケダ」

幼い口元で『子ども斯くやあらん』とは言うものの、言っている事に可愛げはない。
よく分からん、と続きを視線で促すと、赤ずきんは花輪を弄るのを止めた。

「子ドモデ……足ノ遅イ俺ニ、メガトロン様宛ノ緊急モシクハ重要ナ物資ヲ、ショックウェーブガ任セルト思ウカ?」
「……それ、は、分からんでしょうよ。あんたは他のやつらよりは忠信的だ」

少し恨み節のような口調になった小さな機体に慌ててフォローを入れる。しかし、すぐに赤ずきんは自嘲するような口調から、いつものぶっきらぼうな調子に戻った。

「トニカク、俺ノ運ンデイルノハ、アクマデ嗜好品ダ。イクラ好キデモ、毎日デハ飽キテシマウ。ダカラ、届ク日ト、届カナイ日ガアル。オ前ニハ理解出来ナイダロウガ、『待つ楽しみ』トイウモノダ」

言いきると、赤ずきんは花輪を作っているところまでで仕上げてしまった。そうして、しばらくその手元の輪を握る様子を見ていると、ぽつりとこぼす。

「――早ク、大人ニナリタイ」

その言葉と頭巾から覗く幼い横顔がいじらしくて、思わず俺は微笑ましくなってしまった。すこし笑みを漏らした俺に、赤ずきんは憤慨する。しかし、押さえ切れない。

「それも、『待つ楽しみ』ってやつじゃないのか?」
「ウルサイ!大人ノオ前ニハ分カラナイ!」

赤ずきんは頭巾の合間の頬を紅潮させて、シロツメクサの花輪を俺の頭に投げつける。
あーあ、怒らせちまった。だけど、お前が早く『大人』になって欲しいと思ってるのは、別にお前だけってワケじゃねえんだ。大人だから待ってやってるんだ。
ぎゅっと怒りで握られた赤ずきんの左手をやっとのことで開かせ、その薬指にシロツメクサの花を結ぶ。

「俺にだって『待つ楽しみ』はあるんだぜ、サウンドウェーブ」