【サン音】確認癖7

 
 
引っ張り込んだ背中でドアが閉まり、バランスを欠いたサウンドウェーブはそのドアにもたれかかる。手は――まだ握ったままだった。だが、返事はない。
「そんなに、大層なことをお前さんは俺に求めてんのか?」
沈黙したままのサウンドウェーブが少し怖くなり、思わず一歩間をつめる。それに対して、サウンドウェーブがふっと顔を上げた。
「そうだ、と言ったらどうする?」
まさか軽口に反応するとは思っていなっかた俺は度肝を抜かれる。そしてサウンドウェーブはそんな俺に追い討ちをかけた。
「お前のコアダンプを求めたのは、お前の何かが欲しかったのは認める。だが、それだけじゃない。今現在俺のことを好きであろうお前のデータが欲しかった。状況は変化するし、言語は変質する。留め置きたいと思った」
話を聞いていて、眩暈がする。
「つまり、あんたは、俺にあんたをずっと好きでいて欲しいってことか!?」
サウンドウェーブはまた俯き、返事をしない。これは肯定の沈黙だろう。
「……わりぃ、ずっとっていうのは約束できねえ」
約束してやりたいものの、次に何が起こるなんて分からねえ中では確約できない。
素直に言うと、何故かサウンドウェーブは嬉しそうに笑った気がした。
「だろうな。情報はアップデートされるものだ。変わらないといえども、『今現在』からの変化は止め置けない」
サウンドウェーブはそこまで言うとマスクを閉じ、ずっと繋いでいた手を離した。
こいつ、そんな先の可能性まで考えてたのか。俺とのこの言葉で縛っているが、よく分からん関係について。このサウンドウェーブが。
何かぞくそくとくるものがある。こう感じるのは間違ったことなのだろうし、兄弟機が聞いたら大ブーイングするだろう。しかし、
「でも正直、嬉しかったわ」
口を次いで出た言葉に、サウンドウェーブはひどく驚いたようすだった。俺はこれをどう表現していいか分からず、ただ抱きしめるようにドアに相手を押しつける。
この話の前提が、俺の性格やらを見抜いた上で、あのサウンドウェーブがここまで思い詰める程度に俺を好きでいるってことだ。嬉しく思わないわけがねえ。サウンドウェーブがスカイワープやスタースクリームの前では特に注意を払っていない気がすると思ってたが、つまりはあいつらの反応まで考えてたってことだろ。それまでこの情報参謀のブレインに俺は食い込んでいるのだ。
「なあ、俺が何したいのか、今分かるか?」
押し付けるサウンドウェーブの聴覚機に囁く。
「……冷めナイノカ。変な奴メ」
サウンドウェーブが腕の中で小さく呟いたのが聞こえた。
あんたにだけは絶対に言われたかねえ。おあいこだよ。
2014/11/29