「そりゃあ、一体どういう意味だ?」
サウンドウェーブが吐き出した音声の内容が、重大そうな意味を持っているだろうに、俺にはいまいちピンとくるものがない。分かるような、分からないような。
他の奴を介さないと、俺自身や他の奴らが分かんねえ。
自分の言葉に変えてみたが、内在化されない。
「……お前は、他者認識ヲすぐ二自己認識に置き換エル。スキャンしている限り、オ前自身は考エテイルことハ多様ダガ、大抵はソノ後他の機体ノ認識にヨッテ思考ヲ放棄している。俺と実際二会ッテイル時もぐちゃぐちゃト考エナガラモ、イズレハ考えるのを止メテイル。俺に対してノ認識はスカイワープやスタースクリームたちトノ対話で強マル傾向ガアルが、お前はイツカあいつらノ認識トお前の認識ノ反発に飽きるダロウ。モシ長い間、確認がナサレナカッタラ、」
そこで言葉を切る。サウンドウェーブが何を言ってるかは分からないが、最後に何を言いたかったかは分かった。こいつは、俺がそのうちこいつに対する好意を無くすと言いたいのだろう。
そんなことは、
とそう言いかけて黙る。遅れてさっきの言葉の意味の処理が追っついてきて、俺は考え込んでしまう。そんな俺に対して、サウンドウェーブが小さく頷いた。
なんの確信がこいつに芽生えたというのか。何に同意したのか。そんなんじゃねえと反論したいが、ブレインの演算上に言葉に出てこない。
「お前ハ俺トイウ機体がワカラナイから興味を持ってイル。知ラナイから知リタイと思ッテイル。ヨッテ、慣レタリ、手に入レタラどうでもよくなってしまうダロウ。俺のものニシタイ。ソウイッタ支配欲はお前ガ求めサエスレバ、簡単に満タサレル。ソレニ、俺ハお前が思ってイルほど、何カヲ多くハ持っている訳デハナイ」
サウンドウェーブが言ったことは、完全には否定は出来ない。
俺はサウンドウェーブに振り回されたり混乱させられたりする時、俺の予想を越えるこいつの行動を面白く思っていなかったか?振り回される恐怖感や焦燥感を楽しんでいなかったか?そう言い換えてみればわかりやすい。少なからず、楽しんでいた。悪く思っていなかった。
サウンドウェーブが言いたいのは、そしてそういうスリルはすぐに慣れちまうってことだ。それは俺だってよく知っている。次へ次へと動いていかないと、慢性化する。より強い刺激を与え続けられなくてはならない。
こいつはそういう先のことも考えていたのか。
俺はただただ驚く。しかし、こいつが言ってることだけが本当のことなのか。これは、サウンドウェーブの言うところの、サウンドウェーブの『認識』だろ?じゃあ、俺のは?
自分で自分の考えを言葉にするのに何かが引っかかって発せない。
以前サウンドウェーブに対して、『こいつは自分の感情さえうまく知らねえんだ』と思ったことがある。飛んだ皮肉だぜ。でも、俺は『知って』はいる。
「俺はーー」
やっとのことで絞り出した言葉は、突然聞こえてきた別の声音によって途切れた。
2014/11/20
20 2014.11