【サン音】確認癖6

ドアの敷居をはさんで手を繋いだままどうするかの挙動を見つめていると、サウンドウェーブはマスクを開け、大げさに排気音をついた。
「……お前と居ると、エゴばかりが肥大するな」
質問した内容が帰ってこないのには、何かを説明したいのだろう。
「俺のせいなのか?」
「違う、俺が欲を処理できないだけだ。解消する手段は知っている」
「じゃあ何でそんなんになってんだ?」
それにしたって。エゴ、利己心と言われてもねえ。基本的にいつも利己的なお前さんが何を言ってんだ。そのくせ、前に俺が手前勝手を押し付けた時には喜んでたじゃねえか。
「真っ向から拒絶されるとしたら――不快だからだ」
そう言って俯く。最後はどう表現して良いのか困ったらしく、サウンドウェーブにしては拙い言葉が飛び出した。
なるほど、それなら話は分かる。意外と言うか、いやかなり、サウンドウェーブは自己中心的なところがある。自分が不快になる、自分が傷つく可能性があったら言わねえだろうなあ。サウンドウェーブはメガトロン様やデストロン軍団の体系には従順だが、自分に結局不利になるようなことには加わろうとしねえ。そういう我の強さが俺があんまり持ってねえところだ。だから羨ましくもあるんだけどよ。こいつの言う俺の人に流される癖ってのは、こういう性格の違いなのかもしれねえ。
こいつの人の頭ん中を覗ける能力がどれくらいのもんかはしらねえが、多分読めるのは何かの反応だったりその時考えてることだけなんだろう。だから自分から何か言い出さないと俺のブレインに出てこねえこともある。だから分からなかったのだろう。
俺に対しての信用が無かったと考えると、俺も『不快』だ。でも、こいつには以前『心配しないでように、証明し続けてやる』と言っちまったしな。サウンドウェーブが何考えんてんのか知ろうと思うだけで、特に何かしようとはしなかったしよ。俺もこいつも、受け止められるか、相手が分からないからなんて考えてねえで行動しなきゃいけねえ。無理だったら無理って言うし、そうやってなんだかんだは手探りしていけばいい。
「サウンドウェーブ、お前は俺が望めばって言ったけどよ。あんたは俺に何を望むんだ?俺が不安になるのは、いつもお前さんが俺にどうあって欲しいのか、あんたかが何をしたいのか分からねえからだ。俺だってあんたが望みさえすれば、他の奴らの前で俺があんたのもんだって見せつけてやってもいい。俺は、あんたが思ってる以上にあんたが好きだってことはもう吹っ切れてんだよ。これは俺自身が考えてることだ。今はあいつらも居ねえし、こればっかりあんたの意見でもねえ。そうだろ?」
分からなきゃ、俺が分かるまで話してくれ。だから、諦めるのはやった後にしてほしい。あんた、俺が分かんなくても良いって思ってただろ。
そうブレインの中で言葉を作り上げると、手の中でサウンドウェーブの指がかすかに動く。俺はそれを合図に、ついにその腕を手繰ってサウンドウェーブを引っ張り込んだ。
2014/11/28