わしさんと橋子さんと、診断メイカー(http://shindanmaker.com/154485)のお題をお借りしてサン音リレー小説企画。
1番: わしさん → 手を繋いで帰ろう(http://privatter.net/p/579614)
2番: 橋子さん → いつか帰りたい場所(http://privatter.net/p/590114)
これは3番目でアンカーです。1番2番のお話に無理やり繋がらせてますが、時間経過アリ。
140字作文の予定でしたが、先のお二人のサン音に萌えてルール違反しました。140×10ツイです……
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「最初から最後までケンカ」
眺めの良い開けた場所に夕暮れが迫り、その薄暗がりの中に溶けていく群青の輪郭に不安感を覚える。ひとりで行動することの多いサウンドウェーブだが、俺が見ていなかったらそのまま何処かへ消え失せてしまう気がして。普段他のやつらが揶揄する冷徹、陰険、頑固などと冷たい固いイメージが嘘のようだ。
視界が光源を失って暗視に切り替わる。「……今回は、いつもより、長いな」何かあったのか。そういう気分の時もあると考えればそこまでだが、急速に高まった不安感にサウンドウェーブの様子が気になりだす。マスクとバイザーで元々表情の読めない機体だが、その後ろ姿となると余計にうかがい知れない。
野暮だと分かっているが、好奇心と自分の心許なさに負け、歩み寄る。そういえば、この『サウンドウェーブだけの時間』の時に俺から近寄るのは初めてだ。その顔をアイセンサーの端に捉えるだけでも良い。あいつを確認したい。目標達成まであと少し、というところでふいにサウンドウェーブが振り向いた。
何故ダ?そのフラットな声音声からは計り知れないが、怒気を含んでいる。「すまねえ、あんたを邪魔するつもりはーー」「違ウ。何故俺ナンダと聞いてイル?」情報の齟齬に頭が真っ白になる。しかし、混乱しているのは俺だけじゃないらしいのがサウンドウェーブの次の言葉で分かった。「何故お前ナンダ」
「は?」「納得、出来ナイ。理由が分カラナイ」なにがトリガーになったのか。会話以前の自己完結で話をつなげられないほど感情的なサウンドウェーブを見るのは、初めてだった。唖然とはするが、妙な冷静さが帰ってくる。俺に向けて怒っているのか、自分に対してなのかはその様子から判別出来ない。
「……よくは分からねえが、もういいのか?」落ち着かせようといつものように手を差し出すと、ぎゅっと握られる。その反応に安心はするが、混乱はまだ収まらないらしい。「信頼出来ナイ」あまりの矛盾に思わず笑ってしまう。「手は握ってくれるのに?」瞬間、振り払われそうになった手を固く握り直す。
少しの間の手を介しての押し問答を経てやっとサウンドウェーブの反応もゆるやかになってきた。「落ち着いたか?」「オ前という奴ハ、ヨク分からナイ」そう言って俯く姿に、妙な愛着のようなものがこみ上げる。「あんたほどじゃないさ。とにかく、よく分からねえがあんたが分かるまで付き合ってやるよ」
気がづくともう西に月が昇り、辺りがうっすらと仄明るくなってくる。「とりあえず、今日はもう帰るとしようぜ」絡めた手をゆるく引っ張ると、サウンドウェーブもつられて歩き出す。「で、理解は出来なくても納得は出来たのか?」茶化すように言うと、サウンドウェーブがまた少し俯いた。
「……ウルサイ、黙レ」「なんだ?つれねえなあ」じっと覗うと、月明かりに浮かんで見えるその白いマスクの下に赤みが差している。それに気づいた瞬間、自分の機熱が上がるのが分かった。とりつくろうにもこいつにはブレインスキャンがある。最初から最後までケンカ腰。こいつは分かりにくすぎる。
安心した様子とあの『信じられナイ』という矛盾。「おまえさん、分かりにくすぎやしねえか?」その言葉をこぼすことしかできない。 ……それから、お互いにそれ以上なにも言えなくなった状況で、振りほどかれない手を握りながら。今や「ふたりきりの時間」になってしまった帰り道をゆっくりと歩いた。
2015/1/14
企画に参加していただき素敵なサン音ありがとうございました!>わしさん、橋子さん
14 2015.1