「ハージメーッ!」
俺ちゃんが風呂に入ってる間に先に寝ちゃうなんて、俺ちゃん寂しーいー!
野郎二人の重みに、飛び乗ったマットレスがギシギシと軋む。横を向いて寝ている背に抱き着くと、地獄の底から響いてくるような低い唸り声があがった。今ので俺ちゃんの『お姫様』が起きたらしい。
起きなかったらチューしようと思ってたのに。
「……オイ、三鶴。俺は眠てえんだ、じゃれつくんなら明日にしろ」
腕の中のハジメはつれなくそう言って、もう一度眠りにつこうと身体を丸める。こちらを見ようともしない。
「そーんな冷たいこと言うなよ~俺とお前の仲じゃんか」
不機嫌な気配を感じ取りつつも、その身体に足を絡める。顔を押し付けると、俺の使ってる石鹸の匂いの底に、いつものハジメの匂いがした。
筋肉質な広い上背からの引き締まったウエスト。腕にフィットする抱き心地の良い逆三角形の身体のライン。
いいねえ、そそるぜぃ。
硬くなったものを押つけると、流石に俺がただじゃれついているだけじゃないと分かったらしい。舌打ちと共にハジメがこちらを向いた。
「バカみてーにサカってんじゃねえよ」
「いやいやあ。ハジメが無防備にしてるから、俺ちゃんムラムラしてきちゃったんだよねえ」
その気だるげな切れ長の赤い瞳は寝入り際の涙に湿っていて、ひどく色っぽい。
ハジメ、明日からはこういうお耽美な路線で行くのもいいんじゃない? って無理か! それにこういうのを見れるのは俺くらいだもんね!
「明日は出勤日だ。俺は早く寝てえ。やめろ」
「えー、ヒトの部屋に泊まりに来ててそれは無いんじゃないの?」
後ろから覗き込んでキスをしようとすると、ハジメが表情を歪ませたのが見えた。
いいねえ、そのカオも。
浮き出た唾を飲み込む。腰に回していた腕を胸元へ絡めると、無言のうちにハジメの手で外される。それが可愛くなくて、素っ気なく腰の位置にまで押し戻された手を今度は下に降らせ――ズボンの中に手を入れようとすると、ハジメがその手を掴んで体をそらした。
「やめろっつってんだろ」
「アレレ~?手を下に持ってったから、俺ちゃんに早く触って欲しいって誘ってんのかって思ったんだケド」
「ふざけろ! 早くどきやがれ!」
こんな時間に大きな声出しちゃ駄目だよお。
大口を開けたハジメの横顔に食らいついて中をねぶる。
この看守寮だって廊下に出たら監視カメラや集音器ついてんだから。今はって? それ聞いちゃう? うーん、ドウデショ?
俺の舌をそれ以上受け入れまいと頑なに閉じている歯を一本ずつ舐める。服の中に手を潜り込ませ、まだフニフニしている乳首をつねる。
「――ッ、」
後ろからってのがやりにくいけど。ハジメったら、良い表情に良い反応するんだもん。
その様子を楽しんでいると、ついに突き飛ばされる。
「……鶴テメー、やめろって言ってんだろ。それに、ピアスにしろ歯にしろ痛えんだよ、ド下手くそが」
口の中で俺の八重歯や舌ピが引っかかったらしい。口に手を当ててもごもごさせながら、上半身を起こしてハジメが喚く。
俺ちゃんのピアスがひっかかるなんていつものことじゃーん。いつかスプリットさせたら痛くなくなるかもね。てかスプタンでしゃぶられると超気持ちいいらしいじゃん? なら、拡張しちゃう? 迷っちゃうなあ。
毎度のことながらもハジメにはいつまでたっても不快なだけらしく、にやにやしていれば鋭く睨まれる。いや、いつも言われてるのにいつまでもピアス引っかける俺ちゃんに怒ってるだけかもだけど。
「やーん、そんな怖い顔しちゃあ」
それよりもっとエロエロな感じに乱れてちょーだい。
馬乗りになって、上着を脱ぎ捨てる。ここでやめるつもりなんてさらさら無い。キスの雨を降らしながらハジメの服を剥いでいく。
ハジメは優しーからね。そんな怖い顔して見せたって無駄無駄無駄。結局は俺ちゃんのこと許してくれるんだから。
先程は嫌がった舌ピがわざと当たるように乳首に吸い付く。相変わらずハジメは俺を退かそうとしてくるが、本気じゃ無い。その証拠に、だんだんと続けるうちにその力は弱まっていく。
まったく素直じゃないんだから!
ここぞとばかりに先程は食い止められたズボンの中に手を滑り込ませると、中の下着の薄い生地の下でもったりとモノが立ち上がりつつあるのが分かった。
「あらあらーん? ハジメのジョニーは正直だこと♡」
下着まで剥ぎ取り、脚を開かせる。ハジメは手で俺の手をいちいち止めようとするが、もう抵抗らしい抵抗もない。なおも後ろへ指を潜らせれば――
お、準備してある。
1本目がするりと入るし、中が柔らかい。2本目を突っ込むと流石に痛かったらしいが、それでも入ることには入る。綺麗にしてある。引き抜いた指を見せると、ハジメはもっと酷い顔になった。
「うるせえ!こっち見んな!どうせこうなるって思ってたんだよ!」
まあ、そうだよねえ。泊まりに来るってことはヤるのも了解の上だよねえ。にしても、嫌だ嫌だ言いながら、ちゃんとこういうところはやっといてくれるのね。
喜びをハジメの肌の上に表現する。
「んもう、ハジメってば……好き!」
ハジメは煙草の匂いのするため息を大きくつくと、ついに俺の背中に手を回した。
「さっさと済ませろよ、三鶴」
「いやいや、こんなの、寝かせられるわけないでしょ」
「バカが……」