「三鶴、起きろ」
「やーん、ハジメってばオジーチャンみたいに起きるの早いんだから、もうちょっとだけ〜」
拳が無言で降ってくる。
俺ちゃん、起き抜けの一発はげんこつじゃなくて違うイッパツのがいいんだけど。
覚醒と脳震盪と眠気の狭間の視界で、ハジメが制服を着ているのが見える。つやつやとした俺の好きな黒に身を固めていくその姿をぼうっと見てると、視線に気づいたハジメが不審げにこちらを見てきた。
「……何見てんだお前」
「俺だけのハジメを見てるのよーん♪」
「誰が、お前の、何だって?」
ガンつけながら屈んできたハジメの顔をガッチリと掴む。
ワァオ!ドアップで凄まれると青筋立ってるのくっきり見えるね。でも、実際今は俺だけのハジメだもん。
前にキジちゃんに惚気てみたものの、わかってもらえなかったけど。『あの』ハジメが俺ちゃんのために時間割いて何かしてくれてんだぜえ? こんなLOVEなことってないデショ?
ハジメは割と甘いけど、今んとこは俺ちゃんがいっちばんとは思う。ハジメったら誰彼構わずモテちゃうし、看守長にしろ看守にしろ囚人たちにしろ、俺ちゃんなりには応援はしてるけどねえ。
引き寄せた唇に食らいつく。口を離したらきっとまた舌のピアスの件を文句言われるんだろうなあ。
みんな、ごめんね〜。
でもまだまだハジメは俺ちゃんだけのもの、って事で。