しょたクラ音波(サン音) - 2/2

「サウンド、ウェーブっ、なあっ、気持ちいい?」
「……アア」

 腰を打ちつけながら、何回も聞いてくる。気持ちが良いことにはいいのだが、やはり簡単に抜けやすく、あと一歩のところでいつも燃え上がらない。
 先ほどから何度も接続を繰り返してはいるのだが、生殺し的に萎えない程度に刺激が繰り返されーー

「んうっ、出……!」

 あっけなくサンダークラッカーの方が先に達してしまう。
 幼い体が弓状に反り、内側に熱いものが流動しているのが感じられる。先ほど、果てる前には一言言ってからにしろと伝えてから律儀にそれを守っているのにやはり幼さというか素直さが見える。
 必死に腰を動かす様子には愛しさのようなものを抱いてしまう。一生懸命に俺のコネクタを摩ったりはするが、閾値の下がった敏感な小さい体躯では俺の限界まで持ちこたえられず、やはり不完全な接続しか出来ない。
 しかしこいつの紙装甲では受身に回るのはきついし、ジェットロンは構造上もともとの体力ですら俺より少し低い。持続力があるのは良い事だが、機熱の高さは流石に心配になる。

「休むカ?」
「大丈夫、まだ、萎えて、ないっから……っ」

 しかし、そう顔を赤くさせて冷却水を滴らせて溶けた顔を見ていると心配にはなる。
 寝転がったままベッドサイドの収納に手を伸ばす。すると、サンダークラッカーは行為が俺の気が逸れたのが気に食わないらしく、抜かないまま中を動かし始めた。

「ソウ、がっつく、な!」

 制御のヒューズでも溶けおちたのか。熱でぐずぐずになった頭は見た目どおり子どもっぽい行動を取る。俺もこうだったのだろうか。サンダークラッカーは俺を子ども扱いしない割に、俺をこいつの思う『サウンドウェーブ』扱いはしなかった。俺も同じことをしているのかもしれない。
 相変わらずサンダークラッカーのブレインの思考はちれぢれに混乱していて、読み取りづらい。ただ、今度は接続をしたくないのではなくやめるのが嫌になったらしい。
 やっと指先に目当てのものが触り、手繰り寄せる。
 軽食用のエネルギー。

「ホラ、続けたいナラ、口を開けろ」

 目の前にエネルゴンを持ち上げる。大人しく口を開けて指先に近づけるのを見て安心していると、指ごと咥えられた。
 口の中が、熱い。
 しゃぶるようにして指の間からエネルギーを受け取ったサンダークラッカーはまだ足りないというように指を舐めた。求められるからには、満足するまで与え続ける。その間、頑なにコネクタを抜こうとしないことにも思うことがあるらしい。
 そうこうするうちに満足したらしいのが分かり、指を抜いて、頬を撫でてやる。
 俺の方が熱の低いせいか、その手の中でサンダークラッカーが手が冷てえ、と気持ちよさそうな顔をした。

「なあ、さっきの」
「ドウした?」
「ハッチ開けるやつ、アレはもう、俺以外にはしねえで下さい」

 少し機熱が下がったと思えば、またわけの分からないタイミングで。
 それに。お前でも嫉妬するのか。そう不思議に思う。

「分かった」

 そう応えると、またたどたどしい接続が始まる。
 最奥まで届かずに腹部に溜まり溢れているオイルのせいで、ストロークのたびに奥の空気が動いて、大きな音がたつ。その幼さとしている行為のギャップを見せつけられた気がして、目眩がする。
 水音が身に響く中、思わず喘ぎを漏らすとサンダークラッカーが嬉しそうに笑った。

「んぅ、嬉し、そうだ、ナ?」

 そのへらっと崩れた表情見ていると、その鼻先からオイルが滴ってくる。
 驚き、行為をやめさせようとする。しかし、サンダークラッカーは嫌だと首を振った。それにあわせて、オイルと洗浄液がまざった液体が鼻から頬とあごを伝って俺の胸元に落ちる。

「馬鹿、何をシテイル?オイルが出ている。早くやめ、ろ!」

 強情をはるサンダークラッカーに思わず大きな声を出すと、それ以上の大声が返ってきた。

「いやだ。俺っ、いつもよりコネクタも小さいけど、サウンドウェーブのことっ、満足させたいからっ!あんたがイクまではやめねえ!」

 初めは嫌がったくせに、何回もやりたがるのはそういうことか。
 確かに俺でさえ、小さくなったこととそれから起こったことで自信のようなものは大きく傷ついていた。こいつも、そうだったのか。
 呆れと愛しさの混ざり合った感情を処理しきれない。

「サウンドウェーブっ」

 その間にも、サンダークラッカーは俺の膝を持って折り開くように上半身に寄せてくる。キスをしたいようで、ぐっとコネクタを奥へ沈めながら、俺の顔に向かってその手を伸ばす。
 その少し体位がズレた瞬間、――体に電流が流れた。

「〜〜〜〜っ、」

 身体が跳ねた衝撃で、少しサンダークラッカーを押し返す。しかし、
 いい、ところにだけ、ちょうど、当たる。最奥、ではないのに、いい。

「ここが、いいのか?」

 サンクラがとろけた顔でにこりと笑ってそういったのが聞こえた。

「あっ、だめ、だ、ぁっ」

 ゆっくりと高まってきていた快感が、一気に噴出したのが分かった。機熱が急激に上がりだす。

「だめなところ、が、いいんだろ?」

 サンダークラッカーがキスしながら、先ほどの場所をこするようにコネクタを打ち付ける。目の奥がバチバチと瞬く。
 急についたスイッチに、身体ばかりが先行して頭がついていかない。

「サウンド、ウェーブ、……かわいい」

 欲しかった言葉が今になって降ってくる。
 俺はもう何がなんだか分からなくなっていた。

「かわ、いい、もっと…さうんどうぇーぶ、見たい」

 喘ぎ喘ぎの中で、『可愛い』という言葉が繰り返される。

「あ、それっ、そこ……、イ、いっ」

 キスをどんどんされる。腰が溶けそうになる。もう声が抑えられない。
 だめだけど、いやじゃない。

「んっ、ふ…ぁ……、うっ」

 もう限界で、言葉すら出てこなくなってくる。サンダークラッカーも荒い息の中でただ、腰を寄せてくる。気づけば、その動きを全部受け止めようと自然と俺も足が開いている。
 ぱちゅんぱちゅんと『接続している』音が鳴る中、小さくサンダークラッカーが何かを呻いて、放たれた熱とともに俺も思考を手放した。