7BV:SSまとめ - 1/3

レナ+マシュ→リズ

「なんだよ、せっかくレナん家遊びに来たのにリズは『アーウィンさん、私手伝います』なんて言っちゃってさ」

居間のソファにて大きな伸びをしたマシューは、やんなっちゃうな。そう言ってそのまま横にごろりと寝転がった。そうだよな?目が合うと、不満そうに頬を膨らませたマシューは言った。マシューは何か不満なことがあると、この表情をよくしている。お兄さんからあのオレンジのトレーナーをお下がりにもらって学校に来た時もこんな顔をしていた。物欲しそうな顔と言うのだろうか。
それでも、あのトレーナーをマシューがその後気に入ったのだろう。それとも『マシューにはオレンジが似合うんだから良いじゃない』リズのこの台詞が効いたのか、あれからよく着ているのを見かける。確かに元気なマシューに鮮やかなオレンジはよく似合っていた。
『全く、世話が焼けるのよね』リズの笑い顔が頭に浮かんだ。

「何で笑うんだよ、レナ?」

ソファに寝そべりながら、マシューが不服な声をあげた。思い出しながら笑ってしまっていたらしい。 違うの、違うのよマシュー。
くすくす笑いが止まらない私に、より一層マシューの顔が曇る。

「ちぇっ、レナは悔しくないのかよ」

え、私…?私は……ううん。悔しくなんてない。私はリズのことが大好きだし、リズも多分そう。マシューはもちろんのこと、アーウィンのことも好きだ。
私の大好きな人達。みんなが仲良く笑ってているのは私の一番の幸せだもの。

「マシューは、リズがアーウィンにとられたようで悔しいのね」

マシューがソファから、ばっと身を起こした。興味深そうに私のことをじっと見つめてくる。私の次に発する言葉を待ち望んでいるようだった。

「レナって、たまに大人みたいな――」
「マシューもリズとアーウィンたちに混ざってくればいいのよ」
「前言撤回!」

またマシューはふてくされたようにソファに沈む。そこに誰かの肘が入って、痛いっとマシューが呻いたのは瞬きをする一瞬の間だった。
見上げると、ケーキの載ったトレーを器用に持ちながら、リズがきりりと片方の眉を上げてマシューを見下ろしている。

「こらっレナが座ってるのにお行儀悪いでしょ」
「リズ、私は構わないわ」

うるさいボーリョクオンナ。呻きの下でマシューが毒づいた。なんですって。リズがマシューをきっと見る。
ああ、いつものマシューとリズだ。私が思わず笑うと、2人も顔を見合わせると声をあげて笑った。マシューは照れたように。リズは肩を少しすくめて。
紅茶を運んできたアーウィンが不思議そうにこちらを見たが、私はリズとマシューが笑ってくれる嬉しさににっこり笑うだけだった。

2010/12/6