カラ松受けのSS連載(未完・一カラ、チョロカラ) - 1/3

マウンティング

「次、二軒目どうするー?」
「僕、やきとり食べたいかも」

体が揺らされ、意識が軽く浮上する。周囲を確認する前に、持ち上げられる。次の体勢で経緯は分かった。
ああ、いつも通りか。
少し飲んだだけで酔いつぶれて、兄に背負われる。この背中はカラ松だろう。さっきの揺れは、おぶられた時のものらしい。

「フッ……俺パス」
「なんでー!?」
「こいつ寝落ちてるし。俺も兄として――」

肩の動きで、カラ松が髪の毛をかきあげたのが分かった。
しかし、

「分かったー。じゃあ、また後でねー」

最大限のカッコつけを、他の兄弟はいつものようにスルーしたらしい。カラ松もからっきし飲めないのはみんな知ってるし。すぐに声が遠ざかっていく。
そんな仕打ちにもこのカラ松はすぐに流してしまう。小さく頭をやれやれと横に振ると、家の方面へ歩き出した。
だから、学習能力が低いって言われんだよ。何回シメても絡んでくるし。こういうところを見てると、なんだか意地悪な気分になる。
わざと脱力して負担をかけるくらいじゃ、この兄はへこたれない。それをやった上で、耳元に口を近づけて息をかける。それを無意識にか頭を振って避けようとするが、続けるうちに変なところにかかったらしく、ぶるりとその背中が揺れた。
ふーん。

「……カラ松」
「ん?起きたか?あいつらは二軒目に行ったぞ」

フッと鼻から息を抜きながら、こちらを振り返る。

「吐きそう」

ぼそりと呟くと、今度は別の意味でその背中が震え上がったのが分かった。

「ゲロか!家までもたねえのか!?」

首を振って、ちょいちょいと側の路地裏も指差す。すると合点承知と、そのビルとビルの細い隙間に俺をおぶって飛び込んだ。

「今降ろしてやるからな」

そう言ってしゃがみこもうとする――
厨二のくせに、お人好しだよな。
俺はそのうなじに思いっきり噛み付いた。

「いってえええええええええ!!」

反射的に殴りかかれる。が、届きすらしない。手加減されてるし。体重をかけて四つ足をつかせる。
それに、マウンティングを取ってるのは俺だ。雌猫のアフターリアクションみたい。でも、ちょっと惜しい。交尾は今からなんだよね。
地面に四つん這いになってめくれ上がった腰に飛びついて、パーカーの隙間から手を突っ込む。同じ骨格だから、服を着ちゃえば見えないけど、俺よりは鍛えているらしい。
あれでしょ。モテたくって腹筋とか腕立て伏せとかしちゃうやつ。でも、今回のこれで、男に落ちちゃったりしたら、すべて無駄になるね。モテたい病なのに。

「おいっ、一松!お前酔ってるからって」
「…………」

振り向く顔にすごめば、すぐに涙目になる。その傷つきましたって顔、むかつくんだけど。

「ぎっ」

爪で乳首をつまむと、流石に痛いと叫び、抵抗が始まった。
肘鉄は流石に痛い。
その首筋にもう一度思い切り噛み付く。と、また静かになった。そのまま、より地面に伏せさせる。身体が密着した途端、えっ、という戸惑った声が上がった。
腹ばいになって尻だけを持ち上げるポーズになって、俺のジャージの下のものが触っているのに気づいたらしい。
遅いけど。

「乳首、びんびんになった」

触っていくうちに、乳首がぷにぷにしていたのが粟立って固くなってきた。

「そんなに触んなっ……なんか、イタ、い」
「気持ちいい、じゃなくて?」

だって痛かったら、こっちだってこんなになるわけないじゃん。
ぴちぴちしたきつめのパンツの上から、半勃ちになっているそれを優しくなぞる。弄っていれば、だんだん固くなっていく。ズボンとブリーフをずり下ろすと、ぴんと上を向いて跳ねた。

「ほら、チンコもびんびんになってきた。今日はお前にしたら飲んだ方なのに」

直接触ってやれば、もう抵抗は完全になくなった。
チョロい。うちの兄弟は快楽主義の駄目人間ばっかだから、酒で理性が緩んでいる今、下の弟に急に性的に襲われても結局こうなるんだろう。
その首筋に歯を当てても、今度は全く別の反応が返ってくる。

「んっ……」

よく響く低い声の振動が、背を通して感じられる。
それが快くて、歯を立てるのを止めて俺は三度の噛み痕から舌を沿わし始めた。今までのわざと痛めつけるような愛撫から一転、急に穏やかなものになったからか、余裕が出てきたらしい。
なんだ、ノってきてんじゃん。

「あ、 ん ……ふっ」

鼻の息が漏れる音に、かすかに笑うような声が聞こえる。

「襲われてるのに、笑っちゃうんだ」
「ふ お前、なんか ぁ、 ネコみたいだな」

服を剥ぎ取りながら舌を進めると、だんだんその肌が汗ばんできた。触れる手に肌が着く感触がいつのまにかある。
路地裏で弟に裸に剥かれても平気とか、本当にこいつの頭の中はカラだとしか思えない。
耳の中を舐めると、カラ松はいつものように笑った。

「それ、なめくじ みたいで、 なんか きもちわる……んッ」

例えに微塵の色気もない。
そのスカした余裕になんだかまたムカムカとしてきて、露わにさせた尻を叩く。

「うるさい」
「わっ」
「ねえ、ここ路地裏」
「、お」
「お前は裸」
「ぎっ」
「今から弟に掘られるんだよ?」
「……っ」
「ねえ」

わざと音を立てるように叩く。
でも、そんなんでもちょっと悦んじゃってるんでしょ?
脱力したその体から離れ、先ほど剥いだパンツのポケットから財布を取り出す。

――やっぱり、入れてる

コンドーム。童貞なのに。しかも二枚も。無駄に。でもこういう時は、規格が似てるのって便利だ。
ひとつ開けて、指につける。赤くなった肌を撫でてそのまま指を滑らせると、次に何処を触られるか分かったらしい。身体にぎゅっと力が入る。

「これじゃ指、入んないんだけど」

四つん這いの体勢を服の上にひっくり返す。流石にやばいとは気づいたらしい。いつもの睨み付けた時のように涙目でこちらを見上げてきた。

「一松……ッ」

開きかけた口を塞ぐ。
まったく、自分と同じような顔の野郎とキスするとは。
もう片方の手でカラ松の鼻をつまみ、執拗に責める。最初は何事だとこちらを呆然と見てきたが、すぐに息が苦しいとこちらの胸をどんどん叩いてきた。

「――うぇっ…げ、」

ついに口を離すと、引きつるような咳をした後にやっと力を抜いてぐったりとした。
その隙に、目標を達成する。脱力した体にはゴムのゼリーもあってか、するりと入った。
ふーん。こんなんなってるんだ。

「な、んだこれ」

中を弄くっているうちにまた余裕が出てきたようだったが、すぐに様子が変わる。いつの間にか萎えかけていた勃起も復活している。中が発達してきて、反応が良かったこりこりしていた部分が分からなくなり、良い部分が広がっているようだった。

「あぁっ ひっ、それ やばい……!」

押さえつけている俺の腕に指を食い込ませているその顔は、眉毛が下がってだらしない。

「いち、松ッ やめっ 」
「気持ちいいんでしょ?」

薄く目を閉じてゆるんだ眉根を舐めると、それがいつも通りにぎゅっと寄った。見開いた双眸は潤んではいるが、力強い。汗でばらついた前髪をなでつけてまっすぐなものにする。
うん。やっぱりこうじゃなくちゃ。カラ松『兄さん』を犯している感じがしない。
満足する俺とは逆に、カラ松は不満げだった。

「一松……ッ!」

その喘ぎながら名前呼ぶやつ。何、結局入れて欲しいわけ?
指を増やしてもチンコは触ってないから限界は来ないらしく、少しでも限界地を上げるためか、腰をじりじり動かしているのがなかなかエロい。
ゆるいジャージとはいえ、こっちは痛いくらいなんだ。そろそろ良いか。
また四つん這いにさせて、手惑いながらもゴムをつける。

「あ”っ」

先で入り口を広げると、そこで今日一番の絶望的な声が漏れた。その瞬間、ぎゅうっと信じられないほど締まる。顔は見えないが、それなりに痛いらしい。

「ぐ」

これ以上進めもしなければ、戻れもしない。
俺はその逃げ腰になった腰を捕まえて、その首筋にもう一度噛みついた。

「いってえええええええええ」
「だから、うるさいよ。人来るでしょ」

路地に色気のない叫びが響く。
その間に自分を沈めると、また萎えかけているカラ松のチンコをしごき始め、俺は腰を動かし始めた。
やばい。突っ込む側としては、想像以上に気持ちいいもんかもしれない。
4回も噛みついただけあって、後頭部にはくっきりと俺の歯型がついている。それを舐めてやる。そのうちに、まただらしない声が漏れ始めた。さっき指を突っ込んだから、だいたい何処が良いかは分かってる。

「ひっ あ、ぁああっ ん、ふ……ぅ」
「そんなにないたら、人来るよ」

兄さん。
そう声をかけても、もう余裕は無いようだ。声を飲み込もうとしてはいるが、それが低い唸り声になっている。その唸りがだんだん高くなってきて、発情中の猫の唸り声のようだった。
いつ何時も良い兄貴ぶるこの兄が、『兄さん』と呼んでも、我慢できない。
ぶるり、と久しぶりに無気力な心に震えるものがきた。
ぎゅっと握ったチンコの先を指でぐりぐりと責める。

「う、ぅううううううっ」

限界なのか、全身がぎしぎししている。

「ほ、ら。カラ松 イって 、いいよ」

唸り声とともに押さえつけている身体が跳ねて、力が入る。手の中はドロリとしたものが広がる。荒い息とともにそれがゆっくりと弛緩される。
抜き出す余裕もなく、俺も吐き出してる。

――ゴムしてて良かった。
俺はぼんやりした頭の片隅で、そう思った。

「ふたりとも何処ほっつき歩いてたんだ!」
「どっか寄るなら携帯で連絡してよ」
「おかえりー!」
「なんかカラ松兄さんにいたっては薄汚いんですけど。てか、その首、どうしたの?」
「フッ……野良犬――いや、野良猫に噛まれたんだよ」
「…………」