「、……!、ゥ」
サウンドウェーブが、ねじ込んだ指のせいで苦しそうに喘ぐ。奥まで突っ込みすぎたか。慌てて指を引き抜く。いつもとは違った、ぼんやりとした表情。悪くない。開放したばかりだというのに思わず、その口を塞ぐ。排気が乱れ、嗚咽のような音に変わった。
なんだか分からねえが、嬉しくて仕方ない。
一度だけ抱きしめると、口を離してやり、前を弄ってやりながら動き出す。
「っぁあああああ!あ、…」
今まで発声器に押し込まれていた音声が一斉に漏れ出したかのように、大きく喘ぎが部屋に響く。サウンドウェーブは自分でもその大きさに驚いたらしく、明らかに困惑し始めた。しかし、一度上げてしまった声を抑えるのが難しいらしく、だらしなく声はこぼれ出す。
「んあっ、あああっ、……ん!あ、ぁあ」
「おい、顔真っ赤だぞ」
指摘することで、余計にサウンドウェーブの機熱が上がる。
こいつ、こんな声も出せるのか。このまま、喉が金属疲労でぶっ壊れちまいそうで恐ろしくもなる。
「なあ――」
流石に心配になり、声をかけようとしたところで、サウンドウェーブが急に必死に下から這い出でようと抵抗を始めた。
「限界か?」
覗き込むと、顔は赤いが、様子はいつもの様子に戻りかけている。
「退…音がす、る、だ、ぇかっ、こっちに来、る」
喘ぎ喘ぎの呼吸の下で呟く言葉を拾ってるうちに、流石に俺の聴覚にも拾える音が入り口の方から響いた。
誰かがこの洗浄室に入ってこようとしているらしい。
連続的にスイッチを押す音が聞こえる。
「……ロックはかけてあるぞ」
そう言うと、幾分サウンドウェーブは落ち着いたようだ。しかし、その様子がまた俺の征服欲を刺激する。道理なんか知るか。
こういう時は、『俺のことだけ考えてろよ』って、前言っただろ?音を拾うくらいの余裕はまだあったってことでいいのか?
その衝動はサウンドウェーブにも伝わったらしい。すぐさま発せられた非難の小声は、悲鳴に近かった。俺はまたさっきまでの動作を開始する。
「何、ぁ、を…考え、て、ぇ、る……!」
「それをあんたは、スキャンしたんだろ」
この部屋のフロアは材質が他と違うから、さっきみてえな声上げたら、よく反響するだろうな。まあ、ドアの向こうの奴が短気な奴だったら、蹴破って入ってくるかもしれねえし。今日、珍しくランブルがイジェクトされたまんまだろ。あいつだったらどうする?
またサウンドウェーブの機熱が急上昇する。慌てて自分の腕を口に咥えるその姿は最悪の事態を想像したらしかった。
「俺が、何、考えてるか……分かった、か?」
「――!――――!!」
もはや声になっていない。抵抗はするが、返ってくる反応はイイものだけだ。手の中で扱っているコネクタも先から薄いオイルが絶えず漏れている。
お前さんは、自分が思ってるより――
「淫、乱…なのかも、な」
そうまた声をかけてても、もうサウンドウェーブには聞こえていないようだった。外のスイッチを押す音もいつの間にか消えている。気づいてねえのか。やっと、あんたを掴んでやったって感じはする。
自分の下で夢中でもがくサウンドウェーブも自分も限界なのが分かった。
「―――――――ッ!」
手の中にオイルが吐き出され、跳ねる機体のナカが収縮される。
全てがくそどうでもよくなる中、サウンドウェーブが噛んでいた腕をブラスターガンに変えてドアに向かって撃った。
「……なんつう奴だよ」
我に返ってから見ると、見事にドアの入力パネルが撃ち抜かれている。いつもの命中精度が嘘のようだ。
これで外の奴がまだ居たらどうするつもりだったのか。
絶頂と銃の反動のショックで一時的なスリープモード落ちたらしいサウンドウェーブを見下ろしながら俺はなんだか無性に嬉しくてどうしようもなかった。
洗浄機のスイッチを入れなおし、機体の表面に吐き出されたオイルを洗い流す。サウンドウェーブの腕にはくっきりと噛んだ痕が残っている。
そういや、こいつの落ちた時のマスクオフは見たこと無かったな。
屈んで、その機体をゆるく抱く。
後でどやされることは間違いねえな。でも、責任は最後まで取るぜ?
「まったく、あんたには敵わねえな」
理性やら道理なんか全く通じなくなる。
その見たことねえ表情で眠るサウンドウェーブに、俺は口付けた。