同じ身長、しかも男二人で相合い傘。兄弟には見えない似つかない風貌。唯一の救いは、強まって来た雨足のせいで人が歩いていないことだった。
こう近づいてみると、本当にお互いにたわいもなく話すことがない。他人と関係の距離を決めてから付き合うようになるずっと前から(気にいらなくても)隣にいる幼なじみのようなもので、家も近く、同じ学校で同じ委員会となると…しかたないのだろうか。
あ、と見たものに思わず声を上げて、静寂を破ってしまった。フランスが不思議そうに覗き込んできて気まずくなる。
「どうした、なんか忘れたのか」
「いや…なんでもない」
俺は目をそらすようにうつむいた。 逆に言えば、距離を決めてないわけだから何処までも離れたり近づける。
さきほど見てしまったフランスの右肩のシャツを盗み見ると、変わらず雨に濡れて貼りついていた。こちらに傾けなくてもいいのにと思ってしまうが、それは言わない。
なんだか、それが嬉しくて。この感情を一体どうしたらいいものか、つい思案してしまう。
距離がいつもより近いだけなのに、心まで近く錯覚しそうになる。
隣のフランスをこっそり見つめる。
フランスがこちらを見たら、この微妙な感情は崩れて跡形もなくなってしまうような気さえする。フランスには分かって欲しいようで気づいて欲しくない感覚だった。