「なぁ、イギリス──」
カッと顔が熱くなるのが分かる。さっきまで寒かった傘の中が蒸してきたように感じた。
フランスの声は掠れていつもより低い。抱きしめられた外側から、振動さえ分かるほどに近いのだ。腕をまわされた背中に余計神経が集中して、脈の中で静かに熱いものが流れていく。
「キスしていい?」
「二度も言うなよばかっ!」
「それってOKってこと?」
恥ずかしさ顔を背けても、自分は相手のテリトリーの中だ。フランスが笑ったのも分かってしまう。
透明な傘の下でキスなんかしたら、他人に見られたらどうすんだ。小さく呟いてもフランスに聞こえてしまう距離。
目をぎゅっと閉じると、額と唇にキスが落とされた。
「なぁイギリス、これでもコンビニで傘買いに行く?」
にやにや笑いを浮かべながらフランスが俺から手を離す。俺はまだ赤いであろう顔に力を込めてやつを睨むが、恐くは出来なかったらしい。
憎たらしくもフランスが言ってのけた。
「キスしてから言うな、だろ?」