デュラララSS詰め - 1/8

セラミック製の狼

眠りから醒めると、顔の目の前で着信を示す光が点滅していた。電話を繋ぐ。コールはトムさんからだった。

『よぉ。今日は出れそうか?』
「えっ…何のことすか」
『いやいや、一昨日の夜のメールで体調悪いから休むって言ってたべ』

その言葉に返事を奪われる。仕事を休んだ?一昨日?俺が?混乱している俺に気づいていない様子で、仕事の話をに続ける。辛うじて話に追いつけたのは、電話を切る直前だった。
「しっかりしろよ」、と携帯の向こう側で笑い声が響いて耳に残る。驚かそうとからかっているようでは決してない。

「……うっす」

やっと返せた言葉はそれだけだった。
髪を掻き上げる。
通話を終えた携帯には、トムさんからのメールが一件入っていた。仕事についての内容と俺の体調を慮る内容。一昨日の送信履歴を見ると、確かに体調が悪いので仕事を休むという旨のメールが送信されている。
自分で書いたのか、全く記憶がない。
それでも仕事帰りバーテン服のまま眠っていたらしい。無意識下で首もとのタイを弛めようとするが、その指が空を切った。周りを見渡すが…ない。無くしたのか?それとも誰かと争った時か?そこまで考えて
――羞恥にかあっと血が昇った。
そうだ、そうだった…思い出した。あのノミ蟲野郎だ。
気づくと、そのまま持っていた携帯をへしゃげていた。

2010/6/?? (titled by くのいち)