新セル+α(未完)
私の料理は、人間にとって壊滅的に不味いらしい。口も食道も味覚もない私にそれは確かめようもないのだが、とてもじゃないが美味しいとは言えないレベルらしい。それでもそれを新羅は涙を流しながら――――
「おいしい!おいしいよセルティ!」
…もちろんそれが私を傷つけないため、奴の愛情表現だとは分かっている。でもその不味さを隠す新羅の行動にイライラしてしまって、結局はいつも実力行使で食べるのを止めさせてしまう。
首を探す傍らで人間の様子を長いこと新羅と一緒に見てきながら、これが恋というものの症状の1つだということに気づいている。私の料理の先生になってくれた播磨美香という少女も同じような気持ちを持っているらしい。『やっぱり好きな人、誠二さんに自分の料理を食べてもらう喜びはありますね!誠二さんの一番好きな食べ物は先にリサーチ済みでしたけど、やっぱり好みの味付けってあるじゃないですか!誠二さんと付き合って誠二さんの好みの味を覚えていく、相手に一体化していく喜びって言うか~』
では、私のこのもどかしさはその喜びが味わえないことにあるのだろうか。
いや、何か方法はあるはずなんだ。味を理解出来ない私が、新羅好みの味付けをいつでも再現できるやり方が――。
2010/5/12