自分のペースで入れているというのに、それとも自分で入れているからか、サウンドウェーブの動きは鈍い。先までを収めて体を震わせる。
首元でお互いを線で繋げるコードのせいで、ちりちりとした刺激は俺が感じているのかそれともサウンドウェーブが感じているのか、その両方なのかはもう分からない。ただ、密着が増して機熱で理性のヒューズが溶け切れそうだ。我慢にならない。
ようやっと半分まで鎮めた腰を落とすように、立てられた膝をこちら側へぐっと引っ張る。ひっくり返りかけたバランスで全体重がかけられたまま根元まで打ち突いた瞬間、裏返ったような声をサウンドウェーブが上げた。
痛みの感覚は無く、圧迫の触覚が息苦しく感じられる。
「動いたほうが楽になるから、な」
「ああっ、動くな、それ以上は、」
サウンドウェーブが固まったままにはどうしようもない。そのまま下から揺さぶってみる。
圧迫から摩擦に変わり、サウンドウェーブの排気音も息苦しいものからくぐもった艶をはらんだものに変わった。貪る余裕すらも無いらしく、無意識に止め処ない刺激を最小のものに押しとどめようと脚部を俺に絡めてくる。それでも足を絡めてまわすことで密着度が上がり、余計に摩擦が強いものになる。
最初からクライマックスに近い戸惑うくらいのものが制御不能に押し寄せてくる。
女みたいだと余裕のない頭が片隅で考える。あの鉄面皮の情報参謀のお前さんが男に機体絡めて揺さぶられる痴態なんて。コネクタが無いのに快感に打ち震えているのが余計にそう見させる。
すると、それを読み取ったらしい。サウンドウェーブが突然息も絶え絶えに反論する。
「オ前ノ方、こそ……」
サウンドウェーブにつられて自分まで五感で覚える閾値が下がった気がする。
「普段、ト変わらナイ……口調の癖ニ……、」
排気口から吐き出される空気とその音が耳障りで、ブレインの中がざわついた。
「そりゃあ、お前さんに欲情してんだからしょうがねえだろが」
何を考えてるかが分かると、言い終わる前に言葉をつなげて口を塞いで言葉を奪ってやる。
やりたいように考えてる、やりたいようにやってるってことか。
繋がったコードでどう感じているか分かった。何を考えてるのも今は分かる。普段は隣に居ても得体も知れねえこの機体が、俺がサウンドウェーブのことばかり考えてるのと同じように今は俺のことだけに電磁波やらを集中させているのだろう。うぬぼれでも何でも、俺のことだけを考えているということだけが独占欲を満たすのは事実だ。ブレインもなにもかも乱されて余裕をなくした顔がいとおしく感じる。陰険参謀殿がなんて顔してんだ。
自分が感じた快楽に相手のものが混ざりこんでヒューズがぶっ飛びそうだ。理性やら分別やらが馬鹿らしくなる。
「俺のことだけ考えてろよ、サウンドウェーブ」
快楽からよじり逃げるように反り返って離れたサウンドウェーブと俺の首と首の間をコードがピンと張られる。このコードがある限り、お互いに一蓮托生のまま離れられないのだ。
コネクタがあろうと無かろうと、溺れちまえば俺の勝ち。どうせ逃げられないんだから、俺とずっと居ればいい。
コードを引っ張って引き寄せて口付けを落としながら、俺は相乗効果の限界を試すべくサウンドウェーブを強く押さえ込んだ。