手に握っていたフランシスの煙草の箱から一本拝借してカチリとライターの火を灯すが、思い出の中でのそれに火をつけるあいつの仕草を思い出してしまう。
あの時の煙草は、俺がパッケージごと潰してしまっただけあって少しよれていたにも関わらず。くわえたあいつにうっかり見とれたのも覚えていた。
(ほら、口開けて)
(今から教えてやるから)
凄く久しぶりに口に加えた煙草は、確かにフランシスの匂いがした。こんなに頭の中であいつのことばかりを考えていたら、これが伝わりそうだ。
思い出したくない。若き自分の青さにざわざわと身悶える。
ダメだなんか恥ずかしくなってきた。