イギリスの家に着くくらいには、天気は暗くなって今にも雨のダムが空で決壊しそうなくらいにイギリスの機嫌は悪かった。先のカフェでの会話から押し黙っている。一人早足で歩いて行くし、こちらから話かけても無視をしたりする。
家に入っても、それは同じだった。客であるフランスを放って置いて、イギリスは自分の部屋に入ったきり、だった。入ってすぐに外で激しく雨が降りだしたので、イギリスが泣いているのは分かっている。
そこまで分かっていても、何をするわけではなく、フランスは客間のソファに沈んでいた。
目を閉じて、雨の音に耳を傾ける。
「イギリス、ついに折れたか」
フランスは薄く笑った。
イギリスが自分との駆け引きの中で、こうも感情的になったのは初めてだ。罪悪感の漂う中でも、それを嬉しいと思う自分は異常だろうか?
イギリス、大人っていうのはずるい生き物なんだ。自分から好きとは言えないものなのさ
だから、この時を自分は待っていたと言っても良いだろう。
お互いに好きだと言うことは、ずっと前に気づいていた。フランスはそれを利用して経済難の時にイギリスと合併しようとしたりもした。思わせぶりな態度をとったり、近づいては離れ、わざとイギリスの前で女と一緒にいたりした。
その長い長い駆け引きで、やっと彼の高い高いプライドが壊れたのだ。まさか、それがさっきの一言でそのコップの中の感情が溢れ出すとはフランスでさえ考えもしなかったが。
あとは、とどめを刺すだけか──
フランスは革張りのソファから浮き上がった。