白粉、香水、口紅、
そんなコケティッシュで女性のためのアイテムの香りが俺が嫌いになったのは、いつからなのだろう。
フランスから、突然そんな懐かしいような甘い匂いが香ると、俺はいつも、もどかしく胸の内を焦がせた。
一晩だけ、と大人びても、優しいあいつは相手が自分から出て行くまで、そのただれた関係を続けたりする。プレイボーイなんて嘘だ。女達がその優しさに甘えているだけ。
まぁ、それを俺に見せつけたフランスもその女達には悪い訳だし、お互いにメリットがあるから、一緒に恋人としていたんだろう。しかし、やはり長く居れば情も湧いてくるわけで。なんだかんだであいつはその女達を大切にしていた。それを男として、一番近い場所で俺は見ていた。
俺にすればいいじゃないか、そう思ったとしても言える訳がない。フランスが俺を好きだというのは分からない、だけどきっと好きな筈だ。
しかし、自信をつけてはあいつはそれを根こそぎ刈っていく。見せつけだと分かっていても、嫉妬は毒のように恋を蝕んでは色を濃くしていく。
俺は、フランスを嫌いになっても良い権利はあった。
だけど、俺が嫌いなのは、フランスから匂うコケティッシュで女性のためのアイテムの香り。
白粉、香水、口紅、
甘く男に媚びる毒。