160字×30題(仏英) - 3/6

まだ矢印な仏英的160文字作文

10 怒る
「何、坊ちゃん怒ってるの?」フランスが頬をつつく。「別に」この会話で俺に構うのはお前ぐらいだと、あきれるだけだったのは昨日まで。認めたくないが、お前が好きだ。ここまで気づくのに何百年もかかったのだから馬鹿なもんだと自分に怒っているだけ。どうやってこの気持ちを表現していいのかも、何をしていいのかも分からないのが癪だった。

11 音楽
CD屋にて、ふと違うジャンルの音楽のコーナーにもぐるり足を運ぶのが自分の店内一周のコースに含まれたの気がついた。あいつの部屋に行った時に流れていた曲を探してしまう。甘いような煙草の匂いと棚に並んだCDやレコード。自分の部屋とは違う、言い表し難い安らぎに似たものを見いだす…相手の好みに合わせるのは自分の流儀には反するが。

12 明日
隣同士がいちばん自然だなんて奴は、俺にはいない。隣にいるのは万年発情期のワイン野郎ぐらいだ。一番長く横に居るのに、一番性格が合わなくて。離れたいからと言っても、いつも一緒にいるわけではない一番気にかかる奴。ふと思い浮かべているうちに、自分の感情についに気が付いてしまった。明日どんな顔で会えばいいんだ。俺は途方に暮れた。

13選択
封筒には、「it is up to you」と書かれたコンドームが入っていた。英語は苦手だから、その訳が『お前次第』なのか『お前の責任だ』なのかは分からない。ただ、これはアーサーなりの表現方法なのだ。どちらにしろ、アーサーが俺を好きなのは間違いないが。選択肢を与えるにしてももうちょっと素直に書けよ。それでも、ちょっと嬉しくて笑えた。

14 悲しい
お気をつけ下さい、嫉妬というものに。それは緑色の目をした怪物で、人の心をなぶりものにして、餌食にするのです。苛立つ感情に冷水をかける。顔を上げると、鏡の中に水を滴らせながら、緑色の目がこっち見ていた。フランスが女にモテるのは充分理解してた筈だったし、自分がこれほど悲しむとは知らなかった。見るんじゃねぇと鏡の中に呟いた。
green-eyed monster:嫉妬(英) シェイクスピアの『オセロ』より

2010/12/5-12/21