160字×30題(仏英) - 4/6

いつもの二人な仏英的160文字作文

15 空
「イギリス」心の内壁が擦れるような声でフランスが俺に近づく。周りにはワインの空き瓶が転がり、一緒に見ていた映画はスタッフロールが流れていた。「キスしてもいい?」ここまできたら取り返しがつかないし、どこからこうなったのかは分からない。それでも空色の瞳は距離をつめるばかりで、もうハッピーエンドしか許されていないようだった。

16 生死(マゾへの目覚め)
イギリスのパンチは結構、いやマジでかなり重い。先ほど照れ隠しで一瞬生死をさまよいかけた俺が言うんだから間違いない。「繊細なお兄さんが元ヤンのに勝てるわけがないんだからね」「うるせぇよばかぁ」イギリスは、真っ青になっていた照れ顔にまた赤味を取り戻した。心配してくれたんだ。歪んではいるが、それを少し可愛いと感じてしまった。

17 飛ぶ
海の向こう側に出かけているはずのイギリスが、ドアの外で立っていた。お兄さん愛されてるよね。このパターンは俺を殴りたくなって、わざわざここまでやって来たタイプだ。「なになに、また俺を殴りに来てくれちゃったの?」イギリスは首を横に振った。「…会いたくなったんだよ、ばか」俺は飛行機で飛んできた照れ屋を引き寄せた。明日は雪か?

18 疑惑
ふと気が付くと、呆れたような表情でイギリスがこちらを覗き込んでいた。「お前は本当に人の話を聞かないな」「ちょっと他の女の子のことをね」冗談に浮気宣言をしてみても、鼻先で笑われる。「それでも、俺のことが一番好きなんだろ?」「………」それは、確かに疑う必要はないことなんだけれど。「この自信家さんめ」「何とでも言えよ、ばか」

19 呼吸
泣いてなんかねーよ!そう言ったイギリスが微かに震えているのが抱き寄せた肩で分かる。もっと甘えてくれてもいいのに。でもそれは言ってはいけない。呟かれる言い訳に突っ込んでもいけない。肩を貸すくらいは頼ってくれてもいいのに……意地っ張りめ。寂しがり屋な坊ちゃんが望むなら、呼吸をするように、空気のように、一緒にいてあげるのに。

2010/12/5-2011/1/3