比較
一巻の「臨也よりは、ずっと気に入った」っていう台詞、ともするとシズちゃんは比較できるような臨也の台詞を聞いたことがあったんだろうな想像SS/かなり削ったので雰囲気を楽しんで下さい。
この取り立て屋の仕事を始めたてから、そのまま続ける中で、実にいろんな奴を見てきた。トムさんは原因があるからその結末になる、そんな簡単で自然なことに気づかない奴が多いなどと前にこぼしていた。
みんな、手前勝手に原因を作るのに、結果を認められずに自分に嘘ついてまで誰かのせいにする。俺はその話を勝手にそう解釈した。
「……臨也、手前よぉ。なんで人間が好きだなんて言いながら弄ぶようなふざけたまねするんだ?」
ビルの壁から引きちぎったポールをグッと握りながら、目の前で笑っている折原臨也に向かい合った。
ひょっとすると、俺なんかよりこいつの方が借金取りの仕事に向いているかもしれない。人のいろいろな感情や表情が見れるのだから。
「知りたいからだよ」
「何で、何を知りたいんだ?」
臨也が間合いを取りながら、嬉しそうに笑った。
「俺が人間を好きで好きで好きでたまらなくて、ってまぁシズちゃんにそんなことを語っても全くの無意味か。あ、君は例外的に大嫌いだけどね」
♂♀
シズちゃんのイライラが俺の返事を聞く度に上がっていく。どうせイライラするのなら、俺に質問なんかしないでその手に持ったポールで向かってくればいいのに。暴力を使う為のテンションを上げているように見える。暴力が嫌いなら、俺に突っかかって来なければいいのに。
「好きな相手である人間をよぉー、何でそんなにすぐに嫌いになれるんだ?」
「俺はただ興味がなくなっただけで、別に嫌いになったわけではないんだよ」
あぁ?シズちゃんが聞き返すように声を荒げた。それをまた笑ってあげる。
「ねぇシズちゃん、知るって大切なことなんだよ。シズちゃんだって好きな相手の名前も知らないのを無責任だって思うでしょ?それを単に広範囲に置き換えただけ」
「じゃあ相手の気持ちはどうなんだ?」
「俺が愛してるんだから、人間の方も俺を愛するべきだよねぇ?」
シズちゃんの手の中でポールがぐにゃりとひしゃげた。だからシズちゃんも、俺の思い通りの行動をしてよ。
まぁ、それでも大嫌いだけどね。
2010/7/18