それでも世界は理由もなく廻る
相思相愛などというのは、戯れ言なのかもしれないが、神様が作ったパズルピースの片割れなのかもしれない。
適量のアルコールは、心地良い眠りへの扉だが、それは屈託なく笑っていられる若い頃だけだ。酒が毎日の習慣に根付いてしまうと、少しだけではもう体は物足りなくなる。もちろん、精神もだ。
少量のワインで浮いた熱で、自分に一番都合の良い妄想がぬるく温められてしまう。その熱を取り去る術もアルコールにしかないのである。
奴に口を塞がれて、犯されて、自分が恥辱と快感に怯えて泣き叫ぶ夢を見て、言葉通りに身悶える。背中のぞくぞくとした痺れと妄想から与えられるエサに、肺が押されて縮み、内臓の深いところが緊張できゅっと軋むのもよく分かってしまう。
深夜の静けさの中で、胃がずしりと腫れたように重い。
ふらんしす、その甘い名前を噛み砕けば口の中に刺さった。痺れが広がって涙が出てきそうになる。
もう一度、泣きそうな声で呼んで、果てるように脳をシャットダウンした。
***
片割れのピースになって誰かと相思相愛になるのは容易いことではないが、そうならないようにするのは簡単だ。
あいつの口を塞いで、犯し、真っ赤によがらせて泣き叫ばす夢を見た。だがしかし、この夢は俺が一番望んでいることなんかじゃない。
俺が一番望むのは、大人気ない喧嘩ばかりの現状の「キープ」であり、俺らに先に進むことはいらない。進んだ先に何があるかを知っているからだ。
フラッシュバックで薬を欲しがっているとする。死にそうなくらいに。気が狂いそうなくらいに。そこで薬をまた服用すれば、もう戻れなくなる。
スピードやLSDと同じだ。やったら、もう今みたいにはじゃれ合えない。もうごまかせない。獣そのもののお互いは、見合えるようなものじゃない。それはアーサーが一番分かっている筈だ。
いつまで、この苛立つリンボーにいなければならないんだ、俺たちは。
救世主は現れない。
2009/3/8