指輪（未完）
イギリスの左手の薬指は、右手の薬指と比べても子どもの指のように細くてその指だけが異様に華奢なのが分かる。と、言ってもいつもその手には黒い革手袋がはめられ包み隠されて、かなりの大多数はそれを知らない。
指の先にはめても、第２関節から下に下がろうとしない銀の細い指輪を手すさびにしていた。俺にはもうとっくの昔に入らなくなったが、イギリスのこの細い特別な指になら入るであろう。そこまで思った俺は、その指輪がイギリスの薬指にはまっていたものだから、出来るにちがいないことをやっと思い出した。
見れば、ちゃんと指輪の内側に古い古い文字で『Ｆ』と彫られてあった。それは俺がイギリスにあげたものだった。
元のあるべき場所にはまった指輪ごと指から水分を抜くように口の中で吸うと、口内でイギリスの指がひくりと震えたのが分かった。
2009/10/18