初代ホイラチェ・3

「既に好きなら、飲んで相手の出方を見ないか?とすると、受け入れた時点で告白成功したようなものじゃないか。それにプラシーボってのもあるだろ?だから君がもし――」
熱心に話を聴いてくれるラチェットくんを見ながら、ふいに寂しくなる。
いつも助手として働いてくれる彼が、誰か女性タイプにしろ男性タイプにしろ付き合ったとしたら、こう横にいることもなくなってしまうんだろう。
ただ、なんとなく。誰かが彼に吾輩自作の惚れ薬を盛って、それを彼が飲むと想像したらスパークが落ち着かなくなった。
でももし、君に誰か好きな奴が出来ても、傍には居て欲しいなあ。
そう思いながら、肩に手を置く。
「吾輩がこのエネルゴンに惚れ薬を盛ったって信じるなら、それは惚れ薬になるって思わんかね?」
とにかく、身内の色恋沙汰はやはり気まずいものがある。
ただ単純に友人のプライベートを覗いてしまって心苦しいというのはある。しかし、この助手であり親しい友人でもあるラチェット君へ想像だけでこれだけさびしくなるのだから、本当に彼が誰かに吾輩の目の前で口説かれでもしたら自分はどうするつもりなのだろう。
そこではっとして、掴んでいたラチェット君の肩から手を外す。何だか急に恥ずかしくなって来る。この体勢でさっきの台詞。まるで吾輩がラチェット君を口説いているようじゃないか。
「なーんてね。例えばの話にしろ、もっとうまい事言おうと思ったんだが。こういう文句は思いつかないもんだね」
慌てて照れ隠しにおちゃらけてみせる。
「なんだね。今のは、口説き文句のつもりだったのか?」
「へへ、インパクトが足りんかったかね?」
よかった、変な誤解もなかった。考えすぎだったか。
声を上げて笑ってくれるところを見ると、ひそかに安堵する。
「それにしても、ジョークにせよ、もともとイメージが薄かったから意外も何もないんだが。君はいつまでたっても恋愛ごとには慣れないなあ」
にやりと笑ってそう皮肉を投げかける彼に『ラチェット君が傍にいる日常』を感じる。
しかし、慣れていないという言葉に少しはむっとした。彼がいままでどんな関係性を他と築いていたかは知らないが――そこまで考えて、だがその通りだと自嘲する。
「おっと、痛いところを突いてくれますね」
「医者は悪いところをつついて直す仕事だからな」
『恋愛ごと』ねえ。久しぶりにそんな概念を自分のことで気にすることになるとは。
そんなんで、よく吾輩も惚れ薬を作ろうとしていたな。
「……まあ、それに惚れ薬ってのも良くないアイディアだったかもねえ。これはボツ案かな」
先ほど投げ置いたデバイスの設計図や理論を、データベースの適当なファイルにインプットする。こういうデータが増えるからメモリの増設を何回もせにゃならんのだが、こういうのが後々必要になった事例もあるから馬鹿にならない。
惚れ薬が必要な有事がそうそう起こるとは思えんがね。
「どうして?まだ失敗も成功もしてないじゃないか」
「いや、コンボイ司令官だったら――」
「ホイルジャックは居るか?」
応えようとしたその途端、ラボの扉が開き、司令官が入ってくる。
なんとタイミングの良いことか。このひとには何かそういった想像を超えるような能力でもプログラムされているのか。無意識に働きかけるとか。一度じっくり調べてみたくはある。
「はい司令官、ここに」
「お前が何か惚れ薬を作るって噂を耳にしてな」
あのゴシップ文化はついに司令官にまで伝わってしまったらしい。
「そのことなんですが、司令官。私とラチェット君で相談したところ、作る必要もないじゃないかって話になりましてね。今ちょうどボツにしたところです」
司令官に今までの経緯を説明する。さきほどのやり取りをかいつむ。振り返ってみるとやはり小恥ずかしい。慢心のような理由付けであったが、司令官も吾輩作の成功品についての信頼はあるようで納得してくれる。
しかし、悪い癖だとは思うが、話しているうちになんとなくもったいなくもなってきた。惚れ薬は作らないにしろ、感情についての心理実験くらいならやってもいいかもしれない。すでにそういった類のことは長いセイバートロンの歴史の中で研究され尽くした分野ではあるが、吾輩の専門ではないし、臨床例や実験を再度やってみれば何かには生かせるかも知れない。
「司令官、しかしこの感情の回路に対するデータってのは、のちのち意外と使えるかもしれないので、基本的なものだけデータを集めることだけはご賛同くださいませんか?」
――もちろん、惚れ薬の開発は無し、で。
司令官の顔色を伺いながら、慌てて付け加える。すると、司令官がマスクの下で少し笑ったのがなんとなく分かった。
「いいだろう。誰しも相手の意思に反して相手に何かの感情を強要することは出来ないからな。特に愛情に関しては自由であるべきだ。……何か新しい発見があるといいな、ホイルジャック。期待しているぞ」
その答えを聞いて、やっぱり思ったとおりだと思う。
司令官だったらこういうだろうと思っていた。そうところが尊敬できるのだが、それでいて、ちゃんと科学者にも理解がある。
ラチェット君がセンサーの端で、よかったなとでも言うように微笑んでいるのが見える。
「お任せください」
出来るだけ力強く聞えるよう、吾輩は司令官にそう返した。
2015/3/3

サンクラショタんぱ (R-18)

#jirettai http://t.co/U6x43HQ2qR
じれったいお題ったーの2015/2/23の結果:
今日のサンクラしょたんぱのお題は、『いとおしい、くるおしい』『ごめんね、すきだよ』『押し付けて、つよく』です。
【あらすじ】アクシデントで小さくなった音波さん。直す方法は接続することだと分かる。そこでサンクラさんを部屋に呼びだし――
設定はフォロワーのKさんのものをお借りしています。
※性的行為があるので、18歳未満は閲覧しないでください

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初代ホイラチェ・2

 
 
「それにしても、何を作ったもんかね」
逃げるように飛び出したスペースの外で、言い訳のようにひとりごちる。
まあよかろう。たまには。ラチェット君にああまで言わせたんだ。イモビライザーにしろネガベイダーにしろ、最近は少しばかり、色々と作りすぎたかもしれない。
自己嫌悪気味に下降する気分とともに視線も下を向く。
吾輩が好き勝手にやらせてもらえるのも、コンボイ司令官の庇護の下の恩恵もあるが、ラチェット君が近くにいることも大きい。吾輩が壊したとしても、彼がきちんと直してくれる。セイバートロンでも類無い優秀な医者、この信頼は代えられない。そんな彼の『兵器以外の平和な道具』と言った後のしまったという顔。心配ばかりかけているのは重々承知だったが、吾輩以上にこちらの立場を考えてくれていたとは。
嬉しい、と思いつつも申し訳なさでいっぱいになる。この気分が続く間に、何か次の発明を探そう。出来るだけ、人を傷つけ無そうなもの――
「ホイルジャック!」
明るい声音にふいに頭を上げると、無邪気に笑う黄色い機体がこちらに向かって手を振って見せた。
「なんか暗いけど、どうしたのさ?」
「バンブル君」
この機体にも何かといつも世話になっている。彼の助けになるものでもいい。
平時において比較的おっとりした性格をしているバンブル君なら、何かいいヒントを持っているかもしれない。
「何か最近困ったことはないかね?」
「それって何かの心理テスト?」
「次の発明のヒントになるかと思ってね。必要は発明の母ってよくいうだろう」
「なるほど、さっきは発明について考えてたのか」
当たらずとも遠からず。ほぼ正解だが、そんなに暗かったのだろうか。マスクをつけているせいで吾輩の表情は見えないはずなのだが。
……そんな吾輩の心配をよそに腕を組んで考え込み始めたバンブル君に少しだけ安心する。
気にしすぎたか。
「うーん、オイラは特にないなあ。でも、昨日スパイクがカーリーにデート誘ったら断られたって言って落ち込んでた、ってスパークプラグが言ってたって聞いたっけ」
「これまたずいぶんと伝聞が多いねえ」
彼が日ごろよくつるんで回っている少年の赤裸々な私生活を垣間ながら聞いてしまい、思わず苦笑する。サイバトロンの皆の間で流行っている人間のテレビドラマのせいだろうか。ささやかなゴシップがこの狭い基地の中でよく流れるようになった。
「えへへ。でも、参考になったかな?」
小さな噂に無邪気に笑っている様子を見るのは微笑ましいが、本人がそれを聞くとなると話は別だ。話をすればなんとやら
「おや、バンブルにホイルジャック。なんの相談だい?」
「スパイク!今、オイラたちで――」
噂の主がそう叫びながらこちらに向かって走ってくるのをオプティックが拾い上げ、咄嗟に何も知らないふりをした。誰にでもプライベートはある。
そのまま素直に応えそうなバンブル君を制して先に質問に答える。
「例えば、二者間の関係性を改善するものを作ったらいいんじゃないかって話をしていたんだよ。もし吾輩が恋の悩みなんかを解消する発明品、例えば惚れ薬なんかを作ったら、君は使うかね?」
しまった。自然に話を振ろうとした結果、すごく遠まわしに振られた一件を知っていることをばらしてしまったように思える。失敗した。ぽかんと呆気に取られる顔を見て、もうちょっと言い方を『調整』すればよかったと反省する。
「スパイク君?」
おそるおそる黙りこくった彼の名前を呼ぶ。はっと我に返ったスパイクは意外にも怒ってはいなかった。
「うーん、確かに効果があって害が無いなら興味がないわけじゃないけどさ。今回は兵器とかじゃないんだってちょっとびっくりしたんだ。だってホイルジャックが言うから」
びっくり。その言葉を言われるほど、吾輩と兵器のイメージが結びついていたとは。まあ、地球で目覚めてからというもの有事ばかりだったから致し方ないのかもしれない。
吾輩だって、ちょこちょこ兵器以外のものを作ってきた自負があるのだがね。でも、イモビラザーの時はスパイクもまきこんでしまった。これじゃあラチェット君にもああも言われるわけだ。
「まあ、それもあるけど。気分転換ってやつさね」
「なるほど。たまには違うものを、ってことか」
それにバンブルが笑い声を上げて素直に応える。
「おいら知ってるよ。アラートに管理が必要な危険な兵器が多すぎるって小言もらったんでしょう」
「はは、やるなあバンブル。僕はてっきりラチェットに何か言われたんじゃないかって思ってたよ」
……本当、よく見ているよ。このふたりの無邪気な鋭さには脱帽する。マスクなんか関係なく、これは幼い勘の類かね。
求めていたヒントは得られたものの、吾輩も流石に力なく笑うしかなかった。
「はは、まあ楽しみにしておいてくれよ」
***
尋ねられた質問に素直に返したホイルジャックへの返答の音声は、自分でも恥ずかしくなるくらい上擦っていた。
「惚れ薬?」
「そう、惚れ薬」
『相手の予想を超えろ』とはよくホイルジャックが言うが。ブレインの片隅にものぼっていなかった言葉に、聴覚がおかしくなったのかと思った。しかし、驚いた私に喜んでいるホイルジャックの様子を見る限り、大真面目らしい。
まさか、そんな欲がこのひとに――いや、まさか。
頭を振って、エラーだらけのブレインを荒治療ながら回復させる。
「誰の需要で?」
「誰でもないさ」
「じゃあ君の需要ってことかい!?」
言葉早に返しながらも、再度ブレインの回路は混乱をきわめる。ホイルジャックにそんなものを作ろう盛ろうなどという気概やら欲望があるとは思ってもいなかった。出会ってから今まで、惚れた腫れたで他の機体なんかより発明品や実験に夢中になっていた彼が。
しかし、流石のホイルジャックも何か感じ取ったのか、設計図を打ち込んでいたデバイスを放り投げてこちらに居直った。
「まさか!たまたま人の色恋沙汰の噂を聞いたところで、我輩のブレインにピーンと来たんでね!」
誰かの需要にと勇んで出て行ったが、結局は自分の興味じゃないか。
そう呆れる。しかし何故か分からないが、少しほっともしている。やっとブレインの動作が落ち着いてくる。
惚れ薬。色恋沙汰。冷静になれば、文字通り『ラブ&ピース』というやつではある。なるほど戦争からは一番遠くにあるようにも思える。
「ラチェット君はどう思うかね?」
緊張したように尋ねてくるところを見ると、先ほどの小言がかなり効いてしまったのだろう。強く言いすぎたか。あえて良い悪いには触れずに、医者としてのコメントを返す。
「確かに誰かを性的に興奮させることは出来る。人間ならフェロモン濃度を上げたり、催淫作用や興奮作用がある薬物を投与すればいい。でも、一時的ならともかく、薬でひとの感情を動かせるって思うのかい?」
「我輩の才能が摂理をうちまかせたら。なーんてね!」
冗談めかして言うけど、ちょっと末恐ろしくはある。ホイルジャックならいつか本当に完成させそうだから反応に困る。感情を司る回路に何か外部から操作出来るとしたら。それも戦意喪失させることが出来たら。応用で立派な兵器転用に出来るじゃないか。
このひとも難儀だな。私が心配しすぎているのかもしれないが。
でも――
「なんでマシンじゃなくて薬なんだ?」
純粋な好奇心に負けて尋ねる。ホイルジャックといえば、科学者と言えど、パーセプターと比べたらどちらかといえば工学の分野が専門だ。
「薬だったら、飲ませなきゃいけないでっしゃろ?マシンで知らないうちに、ってよりはまだひとりよがりって訳じゃない。吾輩がそんなもの作ったってことは、完成すれば周知になる。そうすれば――ああ、それじゃあこんなもの作る必要もないじゃないか」
何かの結論に話している内に達したらしい。自己完結的に話を切り上げてしまう。
新しい発明品の構想から、その発明品を諦めるところへと飛んだ思考を追いかけられずにいる私は置いてけぼりをくった気分になる。微妙な気持ちでいると、我に返ったらしいホイルジャックが解説を始めてくれた。
「例えば、吾輩がどんなやつにでも効果がある惚れ薬を完成させたと耳にしたら、どう思う?」
「どう、って君が成功したっていうなら、効くんじゃないか?」
近くに転がっていたシリンダーを持って振ってみせる。
ホイルジャックが作った。しかも完成品。それなら、効果は認めざるを得ない。
「でもって、そんなタイミングで、誰かが急に君に飲ませるように液体エネルゴンを渡してくる。そしたらどう思う?」
「まさかとは思うけど、盛られたかな?とは思うよ」
ホイルジャックはこれまた近くにあった液体状のエネルゴンに握っているシリンダーから何かを入れる動作をしてみせる。過度に演技じみてはいるが、なんとなく言いたいことは分かってきた。
「飲む?」
「薬が入っている危険があるなら飲まないよ」
「でも、それを渡してきたのが好きな相手だったら?」
好きな相手だったら。
誰も浮かばずに、しかし現実に目の前に差し出されたエネルゴンを見てありありと想像してしまう。
既に好きな相手だったら。しかも惚れ薬を盛ってくるってことは、少なからずこちらに好意を持っているということだ。
差し出されたエネルゴンを受け取り、手の中のそれとホイルジャックを交互に見る。
「既に好きなら、飲んで相手の出方を見ないか?とすると、受け入れた時点で告白成功したようなものじゃないか」
まあ、そうかもしれない。
「それにプラシーボってのもあるだろ?だから君がもし、吾輩がこのエネルゴンに惚れ薬を盛ったって信じるなら、それは惚れ薬になるって思わんかね?」
演技の延長上で肩を掴まれ、至近距離で覗き込まれる。
ホイルジャックが、私に、惚れ薬をねえ。
ただの仮説だが、ぼんやりと想像できなくもない。
今、このエネルゴンに薬が入っていたら。私は――?
2015/2/21

初代ホイラチェ・1

2014/12/14の初代ホイルジャック×ラチェットへの診断メーカー「3つの恋のお題」の結果:『触れたくなった』『もっと、きつく』『甘く触れてみたい』で書いた未完の140字作文を書きなおし。ラチェホイにするかホイラチェにするか未だに迷ってる。多分ラチェホイラチェ。
最近、以前の1ページ毎の視点替えのやり方を忘れて困ってるのでリハビリを兼ねて。
「いやあ、アレは傑作だった」
私を修理しながら、先ほどの光景を思い出したらしいホイルジャックがくすくすと笑って目を細めた。
数デカサイクル前の戦いの最後。デストロンの新兵器が暴走して友軍に暴発、しかも設計者だったらしいサウンドウェーブが被弾。兵器自体は自爆。それが彼には面白かったらしい。修理中で黙っている私をよそに、ホイルジャックの含み笑いはまだ続く。
「あの兵器もデストロンの考えたものにしては、良く出来ていた方だけど」
もともとかなり威力があったらしく、鼬の最後のなんとやらだった割に、サウンドウェーブのマスクやバイザーが全壊して慌てて退却するレベルの損害が与えられていた。
恐ろしい限りだ。
敵であろうと味方であろうと頭にビームが当たるのを間近で見るのはいつになっても慣れんな、としみじみと思う。サウンドウェーブの素顔ってのはそういえば初めて見た。マスクといえば、このホイルジャックもそうだが。
「吾輩だったら、もっとうまく作っただろうね!」
そうだろう。もし、あの兵器がホイルジャックの作った完成品で、彼が暴発したビームの餌食になっていたら。そう想像するとゾッとする。
この自信家の懲りない「天才」発明家の作るものは、そこらへんの地球人の女子大生がいじくれるほど単純だが、驚異的な武器となるものが多い。発想や応用が桁違いなのだ。だから発明が成功しさえすれば、作ったものはすぐに彼の手を離れ、軍事利用されることも少なくない。誰かを生かしたり楽しませたりもするが殺したり悲しませたりもするのだ。もし失敗しても、彼自身や仲間たちが怪我をすることになることも多い。
前にチップを「たまたま頭が良すぎただけさ」と慰めていたが、あの言葉が彼の口から出たのは皮肉だ。
セイバートロン星でこの戦争が起こってホイルジャックのラボがデストロンの手に落ちたのも、彼の発明品を押収するためだった。
出来たよ、と私にかける声の明るいのを考える限り、何か今の一方的な会話の中で思いついたらしい。追憶をブレインから締め出し、慌てて釘をさす。
「しばらく新兵器を作るのはやめてくれよ、ホイルジャック。君が壊れた時のリペアは特別骨が折れるんだから。いつも君が自爆した時に私がどんな気持ちになるか想像したことがあるかね。イモビライザーの時なんかは気がおかしくなるかと思ったよ」
「それは、なんというか、悪かったね。君の医療に関する心情はよーく分かるよ?しかし、吾輩にも科学者の本能として好奇心には勝てなくてね」
このたしなめる言葉も何度目になるかと思うと気が遠くなる。
壊れたら直せばいい。
でも、このひとは、私がどれくらい心配してるか分からんのだろうなと思う。ホイルジャックがもし捕虜になっても、技術力と発明品の為に生かされるだろう。だから、結局彼を最期に吹っ飛ばすのは彼自身の発明品なのだろうという予感がある。
まあ、発明しないホイルジャックってのも想像出来ないし、私やホイストが居てやれば良いのだが。
「まったく……また何か思いついたんだろうけど。たまには兵器以外の平和な道具でも作ったらどうだね?」
そこまで言って、自分の迂闊さに驚く。ホイルジャックが興味のままに作ったものや平時の為の日用品や玩具なんかでも、ホイルジャックの意を超えて軍事利用されたことは今までに何度もあった。だから、最近では最初から兵器として発明品を作っているのだった。こういう話題には気をつけていたつもりだったが。
「へへ、バレてたかね?いやあ、ラチェット君は全てお見通しってわけで」
しかし、話者が私であるということと今までの文脈から、いつもの小言程度に受け取ったのだろう。ホイルジャックはいつもの調子で、いたずらを注意された子どものように笑った。
その朗らかさにほっとする。
「まあ、怪我をした時に我輩を修理するのはラチェット君だし、君にそう言われたら敵わんなあ。この間アラート君にも武器庫に保管している兵器の量が多すぎて管理が大変だなんだって怒られたばかりだし、たまには有事以外にも何か需要に合わせてみようでないの」
頼むよ。そう言うと、我輩に任せなさい、とホイルジャックはVサインをして見せた。
2015/2/4

サン音語り

最近、裏垢やら表垢で語ったものに付け足し的に。Twitterまとめ的なのをあげた時にも言いましたが、2013年の4月から呟いたりしてた書きたいことをあらかた長編や短編で書いちゃったので。蛇足的に語ろうかなと思って。
解釈は人それぞれあるし、合ってなかったらorそのうち現行のシリーズで関係性が変わってきそうだし合わなかったらごめんなさい。まだ読めてないアメコミシリーズいっぱいありますしおすし。とにかく、RIDで決定的な決別ありませんように……!と願うばかりです。
まあ、英語は苦手なので、誤解釈があったら生ぬるく見守ってください。
motto的に、サンクラさんが音波さんの脅していくスタイルに嫌悪は抱かないだろうなと思ったのが書き始めたきっかけ。
元々、音波さんが好きだったのでDVD見ながらスクショしてて画面青いな~寒色可愛いな~程度に思ってたら、「インセクトロンの謎」でなんでこの三人なの?サンクラなの?って思って結局見直したら1話のパイロット版ので敬語にクッソ萌えて最後の方までに何があったんこいつら?とは思ってたのですが。
んで、何で横にいること多いの?アメコミでは仲良しなの?とGoogleてんてーに英語で聞いたら、サンクラさんのトイの尾翼に音波さんの担いでる自分のノーズアートがあるって知って、不正脈になったのが萌えの始まり。(それもあって、MP音波さんのトイは中編を書いてる頃に、MPサンクラさんのトイは後編書き終わった頃に買いました。MPサンクラさんが欲しかったのと、留学してたのと、ハズブロで買うとカセットロンも付いてくるから両方ハズブロ。)
サイトのジャンル傾向ページにも書いてますが、お互いのいろんな面を受け入れられるカップリングだと思っています。上記の理由から、駄目なところもなんだかんだ好意的に受け入れられちゃうので、少し歪んでるのかなと。
・サンクラさん語り
『君しか知らない』や『確認癖』では書ききれんかったけど、基本的にサン音は誰かの介入もしくは他者の存在自体がないと成立しずらいと思う。最近、サンクラさんのwiki見て、まあまあ解釈合ってるんじゃないかなって思ったのが、他のジェッツからのReassuranceって言葉。スカワくんやスタスクさんに「馬鹿!~に決まってんだろ!」「ああ、……そう、だな。そうだよな!」ってやってんだろうなと。こういうのを音波さんが心配になるわけですよ。音波さんに関しては他のジェッツと認識が違うから。そういうのを『確認癖』で書きたかった。
サンクラさんがこだわってるのは、飛ぶことで、かつ彼はそれが彼のAHM後の「変化(心的トランスフォーム)」の後でもやっぱり好きじゃないですか。わんちゃんは空飛べないから、たぶん他者には求めなくなったけど、自分自身は飛ぶこと好きなまま。
私は初代のサンクラさんが人が良く見えるのは、基本的に無関心だからだと思ってます。彼の中のグループ分けは、「飛べる」か「飛べない」かっていうシンプルなもので、飛べる子多いし同型の機体(スタスク、スカワが特に)がいるからデストロンに居る。そして、訓練された兵士だから軍事行動下にいる。そんな単純な理由な気がする。その程度の認識で動いてるからデストロンにモニョることが多いんじゃないですかね。まあ、mottoが「恐怖は最凶の武器」なあたり、服従や制圧はおkだけど虐殺は駄目だったんだろう。
サンクラさんが今のTVっ子サンクラさんになったのは、自分も羽もげて数年だか地上に落とされてたからだって思う。スカワ氏にも攻撃されちゃったし、飛べないしで、しがらみ無くなったからだろう、と。だから今までは変わるとか無くなるとかってことに疎かったんだけど、自分をあのデ軍の場所に押しとどめさせた他のジェッツとのコネクションと飛行能力を失ったことでアイデンティティークライシス起こして、自分を自分から変えていくってのを覚えたんだろう。それが彼のある意味で自己同一性的な適者生存へのストラテジーかな、と思う。とりあえず、羽治ってよかったね。
後悔としては、『君しか知らない』を書いてる頃にまだFor All Mankindのサンクラ主役回のアメコミ読んでなかったので、コンプレックスという風にだけで、サンクラさんの飛ぶことへのこだわりを処理してることです。ヤッチマッタナー。FAMは恥ずかしながら最近読みました。
個人的には、彼のテックスペックで微妙に高い勇気に萌えを抱かずにはおれません。音波さんにぐいぐいやってくれるはず(願望)ってわけで、サンクラさんには踏み込んでもらってる。(というか逆に音波さんはそこまで勇気高くも低くもないのが意外ですが。)
・音波さん語り
全キャラ好きだけど、その中で確実にトップのなかに居られる方。音波さん、本当に謎だけど、だからこそ夢見たり惹かれたりするキャラで、かっこいいしで魅力的です。
なんでブレインスキャンとかいうチート持ってるこの方がいらっしゃるのにサンクラさんは折檻されないんでしょう。やっぱり……!うーん、サン音なのやな。
音波さんのブレインスキャンに関しては、猜疑心をつよくするもの、もしくは、共感できないけど脳に直接来るミラーニューロン的なものかなと思ってました。ら、公式がやってくれた。あの時は本当にプロット全部吹っ飛んだので大変でした。でも、音波さんがより好きになった瞬間でしたよね。保護欲と嗜虐心煽ってくる。完璧と見せかけて諸刃の剣な音波さん最高です。フィルタ無しに他人の感情が頭に入ってくるって、他人のことばっかで自分のこと考えてる暇ないね^^
まああのRID#22のおかげで、サン音をより確信しましたが。サンクラさんは自分の感情とかあるんだけど、周りの特にジェッツと同化しちゃう。音波さんは意識しないと自分の考えがまとまらないくらい人の思考やら感情やらに侵されちゃってた。自立後の音波さんがたまにスキャンするそんなサンクラさんに無意識に好意というか何か自分に近しいものを感じてたら可愛いなと。でもどっかやっぱり壊れてる部分があるんだろうな。人を評価するポイントが他人と全く違うんだろうなっていうのは思ってます。その点、無関心というかさらっとしてるサンクラさんは合うんじゃないかな。
音波さんも周りの関係者と独特の関係築いてて萌える。特にカセットロン。太鼓持ちと思わせといて、重要な仲間で、でも独立した1個体ずつだから……AHMのあの叫んでるシーンはすごく萌えました。結構恨まれそうなこと平気でやってるのに、身内には優しい……
他人の汚いところとか見まくってるから、隠せない頭の中まで覗けるから、どこか愛情表現とか勘違いしてたところがあって、「なんでこいつ我慢してんだ?」と思ったりしてるスレた音波さんなんか居たらおいっしい。
デストロンのみんなバカばかりってのは「音波さんを理解できないアホ」っていう超傲慢っぷりが出てるかなと思うんですが、じゃあ音波さん自身が自分をちゃんと理解してるかってのは超疑問。役割理論じゃないですけど、情報参謀としての自分ってのとか陰険参謀だとか根暗だとか腹黒だとか他人に思われてるとこ利用してるとこもあると思う。それに、そういう自己像が音波さん自身を表わしてるかってーとそうじゃないかなと思われる。内部と外部でピッタシなところとギャップが凄まじいところがかけ離れてて、支離滅裂な時がある気がす。そういうギャップが余計に音波さんにこいつらわかってねーなと思わせてるんじゃ……音波さんには身内は近過ぎるからそれ以外で音波さん以上に音波さんを観察してるひとが必要なんじゃろな。
音波さんは全部頭の中見た上で付き合ってくれるので、歪んでは居るけど、ほとんど受け入れてくれてると考えるとクッソヤンデレっぽくて美味しい。
各小説も書き手的にはこんな印象。
・接点の少ないなふたりなので、馴れ初めなどをそこそこ納得いくように書きたかったのが『君しか知らない』
・ロボホモ書きたかったけど、音波さんがなぜ受になるのかイマイチ説明できず、上下争う話とか考えるの好きなんだけど、理由は分からないけどサン音はほとんど固定だから、そういう接続馴れ初めがあんまり想像出来なかった。ので、トイ買って確信したのもあるけど、「逃げ」として、コネクタ無い音波さん書けばいいやって書いたのが『首引き恋慕』
・『君しか知らない』で書きそびれた要素を書こうと思ったのが『確認癖』。音波さんのブレインスキャンとかいうチートって彼の人格形成とか対人関係への感覚をぶっ壊してると思い、そういうところを書きたかった。あと、サンクラさんが『君しか知らない』でスカワくんとかスタスク氏にちょっかいだされる理由みたいなのを書ききれてなかったのでここで補足しておこうかなと思ったので。特にスカワフレをいつかあの話と平行して展開する話を書こうと思ってるスカワ氏とスタスク氏をちょっと展開上都合のいいキャラ扱いしたくなかった。変化、っていうのがテーマでした。この頃、前述のFor All Mankind読んだので……消化し切れてないけど。
・『理非知らず』は音波さんがちょい快楽主義者ってのを書けば受に回ってても文句はなくね?というのと、その対比でサンクラさんをタチらしく書こうと思って書きました。あのアニメのちゃんとデストロンっぽい時のちゃんとゲスいサンクラさんって難しいです。
・SSですけど、『ハルモニア』はテレビっ子になる要因が音波さんにあったら良かったなと思って書きました。これは消化不良起こしてるので、私にもよくわからないです。結局、生と死とか破壊と再生とか、遠くから見たら調和の取れた音楽みたいな繰り返しだけの単調な変化に見えて、やっぱり始まりと終わりがあって次に変化していくみたいなのが書きたかったのかなんなのかよくわからないです。ナンシー・グリフィスの”From a Distance”的な何かだと思ってください。まあ一応最後は認めてるので、こういうのが過去にあったら萌えるよってことで書いただけ。
そんなこんなで書いてました。