2014/12/14の初代ホイルジャック×ラチェットへの診断メーカー「3つの恋のお題」の結果:『触れたくなった』『もっと、きつく』『甘く触れてみたい』で書いた未完の140字作文を書きなおし。ラチェホイにするかホイラチェにするか未だに迷ってる。多分ラチェホイラチェ。
最近、以前の1ページ毎の視点替えのやり方を忘れて困ってるのでリハビリを兼ねて。
「いやあ、アレは傑作だった」
私を修理しながら、先ほどの光景を思い出したらしいホイルジャックがくすくすと笑って目を細めた。
数デカサイクル前の戦いの最後。デストロンの新兵器が暴走して友軍に暴発、しかも設計者だったらしいサウンドウェーブが被弾。兵器自体は自爆。それが彼には面白かったらしい。修理中で黙っている私をよそに、ホイルジャックの含み笑いはまだ続く。
「あの兵器もデストロンの考えたものにしては、良く出来ていた方だけど」
もともとかなり威力があったらしく、鼬の最後のなんとやらだった割に、サウンドウェーブのマスクやバイザーが全壊して慌てて退却するレベルの損害が与えられていた。
恐ろしい限りだ。
敵であろうと味方であろうと頭にビームが当たるのを間近で見るのはいつになっても慣れんな、としみじみと思う。サウンドウェーブの素顔ってのはそういえば初めて見た。マスクといえば、このホイルジャックもそうだが。
「吾輩だったら、もっとうまく作っただろうね!」
そうだろう。もし、あの兵器がホイルジャックの作った完成品で、彼が暴発したビームの餌食になっていたら。そう想像するとゾッとする。
この自信家の懲りない「天才」発明家の作るものは、そこらへんの地球人の女子大生がいじくれるほど単純だが、驚異的な武器となるものが多い。発想や応用が桁違いなのだ。だから発明が成功しさえすれば、作ったものはすぐに彼の手を離れ、軍事利用されることも少なくない。誰かを生かしたり楽しませたりもするが殺したり悲しませたりもするのだ。もし失敗しても、彼自身や仲間たちが怪我をすることになることも多い。
前にチップを「たまたま頭が良すぎただけさ」と慰めていたが、あの言葉が彼の口から出たのは皮肉だ。
セイバートロン星でこの戦争が起こってホイルジャックのラボがデストロンの手に落ちたのも、彼の発明品を押収するためだった。
出来たよ、と私にかける声の明るいのを考える限り、何か今の一方的な会話の中で思いついたらしい。追憶をブレインから締め出し、慌てて釘をさす。
「しばらく新兵器を作るのはやめてくれよ、ホイルジャック。君が壊れた時のリペアは特別骨が折れるんだから。いつも君が自爆した時に私がどんな気持ちになるか想像したことがあるかね。イモビライザーの時なんかは気がおかしくなるかと思ったよ」
「それは、なんというか、悪かったね。君の医療に関する心情はよーく分かるよ?しかし、吾輩にも科学者の本能として好奇心には勝てなくてね」
このたしなめる言葉も何度目になるかと思うと気が遠くなる。
壊れたら直せばいい。
でも、このひとは、私がどれくらい心配してるか分からんのだろうなと思う。ホイルジャックがもし捕虜になっても、技術力と発明品の為に生かされるだろう。だから、結局彼を最期に吹っ飛ばすのは彼自身の発明品なのだろうという予感がある。
まあ、発明しないホイルジャックってのも想像出来ないし、私やホイストが居てやれば良いのだが。
「まったく……また何か思いついたんだろうけど。たまには兵器以外の平和な道具でも作ったらどうだね?」
そこまで言って、自分の迂闊さに驚く。ホイルジャックが興味のままに作ったものや平時の為の日用品や玩具なんかでも、ホイルジャックの意を超えて軍事利用されたことは今までに何度もあった。だから、最近では最初から兵器として発明品を作っているのだった。こういう話題には気をつけていたつもりだったが。
「へへ、バレてたかね?いやあ、ラチェット君は全てお見通しってわけで」
しかし、話者が私であるということと今までの文脈から、いつもの小言程度に受け取ったのだろう。ホイルジャックはいつもの調子で、いたずらを注意された子どものように笑った。
その朗らかさにほっとする。
「まあ、怪我をした時に我輩を修理するのはラチェット君だし、君にそう言われたら敵わんなあ。この間アラート君にも武器庫に保管している兵器の量が多すぎて管理が大変だなんだって怒られたばかりだし、たまには有事以外にも何か需要に合わせてみようでないの」
頼むよ。そう言うと、我輩に任せなさい、とホイルジャックはVサインをして見せた。
2015/2/4
サン音語り
最近、裏垢やら表垢で語ったものに付け足し的に。Twitterまとめ的なのをあげた時にも言いましたが、2013年の4月から呟いたりしてた書きたいことをあらかた長編や短編で書いちゃったので。蛇足的に語ろうかなと思って。
解釈は人それぞれあるし、合ってなかったらorそのうち現行のシリーズで関係性が変わってきそうだし合わなかったらごめんなさい。まだ読めてないアメコミシリーズいっぱいありますしおすし。とにかく、RIDで決定的な決別ありませんように……!と願うばかりです。
まあ、英語は苦手なので、誤解釈があったら生ぬるく見守ってください。
motto的に、サンクラさんが音波さんの脅していくスタイルに嫌悪は抱かないだろうなと思ったのが書き始めたきっかけ。
元々、音波さんが好きだったのでDVD見ながらスクショしてて画面青いな~寒色可愛いな~程度に思ってたら、「インセクトロンの謎」でなんでこの三人なの?サンクラなの?って思って結局見直したら1話のパイロット版ので敬語にクッソ萌えて最後の方までに何があったんこいつら?とは思ってたのですが。
んで、何で横にいること多いの?アメコミでは仲良しなの?とGoogleてんてーに英語で聞いたら、サンクラさんのトイの尾翼に音波さんの担いでる自分のノーズアートがあるって知って、不正脈になったのが萌えの始まり。(それもあって、MP音波さんのトイは中編を書いてる頃に、MPサンクラさんのトイは後編書き終わった頃に買いました。MPサンクラさんが欲しかったのと、留学してたのと、ハズブロで買うとカセットロンも付いてくるから両方ハズブロ。)
サイトのジャンル傾向ページにも書いてますが、お互いのいろんな面を受け入れられるカップリングだと思っています。上記の理由から、駄目なところもなんだかんだ好意的に受け入れられちゃうので、少し歪んでるのかなと。
・サンクラさん語り
『君しか知らない』や『確認癖』では書ききれんかったけど、基本的にサン音は誰かの介入もしくは他者の存在自体がないと成立しずらいと思う。最近、サンクラさんのwiki見て、まあまあ解釈合ってるんじゃないかなって思ったのが、他のジェッツからのReassuranceって言葉。スカワくんやスタスクさんに「馬鹿!~に決まってんだろ!」「ああ、……そう、だな。そうだよな!」ってやってんだろうなと。こういうのを音波さんが心配になるわけですよ。音波さんに関しては他のジェッツと認識が違うから。そういうのを『確認癖』で書きたかった。
サンクラさんがこだわってるのは、飛ぶことで、かつ彼はそれが彼のAHM後の「変化(心的トランスフォーム)」の後でもやっぱり好きじゃないですか。わんちゃんは空飛べないから、たぶん他者には求めなくなったけど、自分自身は飛ぶこと好きなまま。
私は初代のサンクラさんが人が良く見えるのは、基本的に無関心だからだと思ってます。彼の中のグループ分けは、「飛べる」か「飛べない」かっていうシンプルなもので、飛べる子多いし同型の機体(スタスク、スカワが特に)がいるからデストロンに居る。そして、訓練された兵士だから軍事行動下にいる。そんな単純な理由な気がする。その程度の認識で動いてるからデストロンにモニョることが多いんじゃないですかね。まあ、mottoが「恐怖は最凶の武器」なあたり、服従や制圧はおkだけど虐殺は駄目だったんだろう。
サンクラさんが今のTVっ子サンクラさんになったのは、自分も羽もげて数年だか地上に落とされてたからだって思う。スカワ氏にも攻撃されちゃったし、飛べないしで、しがらみ無くなったからだろう、と。だから今までは変わるとか無くなるとかってことに疎かったんだけど、自分をあのデ軍の場所に押しとどめさせた他のジェッツとのコネクションと飛行能力を失ったことでアイデンティティークライシス起こして、自分を自分から変えていくってのを覚えたんだろう。それが彼のある意味で自己同一性的な適者生存へのストラテジーかな、と思う。とりあえず、羽治ってよかったね。
後悔としては、『君しか知らない』を書いてる頃にまだFor All Mankindのサンクラ主役回のアメコミ読んでなかったので、コンプレックスという風にだけで、サンクラさんの飛ぶことへのこだわりを処理してることです。ヤッチマッタナー。FAMは恥ずかしながら最近読みました。
個人的には、彼のテックスペックで微妙に高い勇気に萌えを抱かずにはおれません。音波さんにぐいぐいやってくれるはず(願望)ってわけで、サンクラさんには踏み込んでもらってる。(というか逆に音波さんはそこまで勇気高くも低くもないのが意外ですが。)
・音波さん語り
全キャラ好きだけど、その中で確実にトップのなかに居られる方。音波さん、本当に謎だけど、だからこそ夢見たり惹かれたりするキャラで、かっこいいしで魅力的です。
なんでブレインスキャンとかいうチート持ってるこの方がいらっしゃるのにサンクラさんは折檻されないんでしょう。やっぱり……!うーん、サン音なのやな。
音波さんのブレインスキャンに関しては、猜疑心をつよくするもの、もしくは、共感できないけど脳に直接来るミラーニューロン的なものかなと思ってました。ら、公式がやってくれた。あの時は本当にプロット全部吹っ飛んだので大変でした。でも、音波さんがより好きになった瞬間でしたよね。保護欲と嗜虐心煽ってくる。完璧と見せかけて諸刃の剣な音波さん最高です。フィルタ無しに他人の感情が頭に入ってくるって、他人のことばっかで自分のこと考えてる暇ないね^^
まああのRID#22のおかげで、サン音をより確信しましたが。サンクラさんは自分の感情とかあるんだけど、周りの特にジェッツと同化しちゃう。音波さんは意識しないと自分の考えがまとまらないくらい人の思考やら感情やらに侵されちゃってた。自立後の音波さんがたまにスキャンするそんなサンクラさんに無意識に好意というか何か自分に近しいものを感じてたら可愛いなと。でもどっかやっぱり壊れてる部分があるんだろうな。人を評価するポイントが他人と全く違うんだろうなっていうのは思ってます。その点、無関心というかさらっとしてるサンクラさんは合うんじゃないかな。
音波さんも周りの関係者と独特の関係築いてて萌える。特にカセットロン。太鼓持ちと思わせといて、重要な仲間で、でも独立した1個体ずつだから……AHMのあの叫んでるシーンはすごく萌えました。結構恨まれそうなこと平気でやってるのに、身内には優しい……
他人の汚いところとか見まくってるから、隠せない頭の中まで覗けるから、どこか愛情表現とか勘違いしてたところがあって、「なんでこいつ我慢してんだ?」と思ったりしてるスレた音波さんなんか居たらおいっしい。
デストロンのみんなバカばかりってのは「音波さんを理解できないアホ」っていう超傲慢っぷりが出てるかなと思うんですが、じゃあ音波さん自身が自分をちゃんと理解してるかってのは超疑問。役割理論じゃないですけど、情報参謀としての自分ってのとか陰険参謀だとか根暗だとか腹黒だとか他人に思われてるとこ利用してるとこもあると思う。それに、そういう自己像が音波さん自身を表わしてるかってーとそうじゃないかなと思われる。内部と外部でピッタシなところとギャップが凄まじいところがかけ離れてて、支離滅裂な時がある気がす。そういうギャップが余計に音波さんにこいつらわかってねーなと思わせてるんじゃ……音波さんには身内は近過ぎるからそれ以外で音波さん以上に音波さんを観察してるひとが必要なんじゃろな。
音波さんは全部頭の中見た上で付き合ってくれるので、歪んでは居るけど、ほとんど受け入れてくれてると考えるとクッソヤンデレっぽくて美味しい。
各小説も書き手的にはこんな印象。
・接点の少ないなふたりなので、馴れ初めなどをそこそこ納得いくように書きたかったのが『君しか知らない』
・ロボホモ書きたかったけど、音波さんがなぜ受になるのかイマイチ説明できず、上下争う話とか考えるの好きなんだけど、理由は分からないけどサン音はほとんど固定だから、そういう接続馴れ初めがあんまり想像出来なかった。ので、トイ買って確信したのもあるけど、「逃げ」として、コネクタ無い音波さん書けばいいやって書いたのが『首引き恋慕』
・『君しか知らない』で書きそびれた要素を書こうと思ったのが『確認癖』。音波さんのブレインスキャンとかいうチートって彼の人格形成とか対人関係への感覚をぶっ壊してると思い、そういうところを書きたかった。あと、サンクラさんが『君しか知らない』でスカワくんとかスタスク氏にちょっかいだされる理由みたいなのを書ききれてなかったのでここで補足しておこうかなと思ったので。特にスカワフレをいつかあの話と平行して展開する話を書こうと思ってるスカワ氏とスタスク氏をちょっと展開上都合のいいキャラ扱いしたくなかった。変化、っていうのがテーマでした。この頃、前述のFor All Mankind読んだので……消化し切れてないけど。
・『理非知らず』は音波さんがちょい快楽主義者ってのを書けば受に回ってても文句はなくね?というのと、その対比でサンクラさんをタチらしく書こうと思って書きました。あのアニメのちゃんとデストロンっぽい時のちゃんとゲスいサンクラさんって難しいです。
・SSですけど、『ハルモニア』はテレビっ子になる要因が音波さんにあったら良かったなと思って書きました。これは消化不良起こしてるので、私にもよくわからないです。結局、生と死とか破壊と再生とか、遠くから見たら調和の取れた音楽みたいな繰り返しだけの単調な変化に見えて、やっぱり始まりと終わりがあって次に変化していくみたいなのが書きたかったのかなんなのかよくわからないです。ナンシー・グリフィスの”From a Distance”的な何かだと思ってください。まあ一応最後は認めてるので、こういうのが過去にあったら萌えるよってことで書いただけ。
そんなこんなで書いてました。
【サン音リレー小説】「最初から最後までケンカ」(アンカー)
わしさんと橋子さんと、診断メイカー(http://shindanmaker.com/154485)のお題をお借りしてサン音リレー小説企画。
1番: わしさん → 手を繋いで帰ろう(http://privatter.net/p/579614)
2番: 橋子さん → いつか帰りたい場所(http://privatter.net/p/590114)
これは3番目でアンカーです。1番2番のお話に無理やり繋がらせてますが、時間経過アリ。
140字作文の予定でしたが、先のお二人のサン音に萌えてルール違反しました。140×10ツイです……
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「最初から最後までケンカ」
眺めの良い開けた場所に夕暮れが迫り、その薄暗がりの中に溶けていく群青の輪郭に不安感を覚える。ひとりで行動することの多いサウンドウェーブだが、俺が見ていなかったらそのまま何処かへ消え失せてしまう気がして。普段他のやつらが揶揄する冷徹、陰険、頑固などと冷たい固いイメージが嘘のようだ。
視界が光源を失って暗視に切り替わる。「……今回は、いつもより、長いな」何かあったのか。そういう気分の時もあると考えればそこまでだが、急速に高まった不安感にサウンドウェーブの様子が気になりだす。マスクとバイザーで元々表情の読めない機体だが、その後ろ姿となると余計にうかがい知れない。
野暮だと分かっているが、好奇心と自分の心許なさに負け、歩み寄る。そういえば、この『サウンドウェーブだけの時間』の時に俺から近寄るのは初めてだ。その顔をアイセンサーの端に捉えるだけでも良い。あいつを確認したい。目標達成まであと少し、というところでふいにサウンドウェーブが振り向いた。
何故ダ?そのフラットな声音声からは計り知れないが、怒気を含んでいる。「すまねえ、あんたを邪魔するつもりはーー」「違ウ。何故俺ナンダと聞いてイル?」情報の齟齬に頭が真っ白になる。しかし、混乱しているのは俺だけじゃないらしいのがサウンドウェーブの次の言葉で分かった。「何故お前ナンダ」
「は?」「納得、出来ナイ。理由が分カラナイ」なにがトリガーになったのか。会話以前の自己完結で話をつなげられないほど感情的なサウンドウェーブを見るのは、初めてだった。唖然とはするが、妙な冷静さが帰ってくる。俺に向けて怒っているのか、自分に対してなのかはその様子から判別出来ない。
「……よくは分からねえが、もういいのか?」落ち着かせようといつものように手を差し出すと、ぎゅっと握られる。その反応に安心はするが、混乱はまだ収まらないらしい。「信頼出来ナイ」あまりの矛盾に思わず笑ってしまう。「手は握ってくれるのに?」瞬間、振り払われそうになった手を固く握り直す。
少しの間の手を介しての押し問答を経てやっとサウンドウェーブの反応もゆるやかになってきた。「落ち着いたか?」「オ前という奴ハ、ヨク分からナイ」そう言って俯く姿に、妙な愛着のようなものがこみ上げる。「あんたほどじゃないさ。とにかく、よく分からねえがあんたが分かるまで付き合ってやるよ」
気がづくともう西に月が昇り、辺りがうっすらと仄明るくなってくる。「とりあえず、今日はもう帰るとしようぜ」絡めた手をゆるく引っ張ると、サウンドウェーブもつられて歩き出す。「で、理解は出来なくても納得は出来たのか?」茶化すように言うと、サウンドウェーブがまた少し俯いた。
「……ウルサイ、黙レ」「なんだ?つれねえなあ」じっと覗うと、月明かりに浮かんで見えるその白いマスクの下に赤みが差している。それに気づいた瞬間、自分の機熱が上がるのが分かった。とりつくろうにもこいつにはブレインスキャンがある。最初から最後までケンカ腰。こいつは分かりにくすぎる。
安心した様子とあの『信じられナイ』という矛盾。「おまえさん、分かりにくすぎやしねえか?」その言葉をこぼすことしかできない。 ……それから、お互いにそれ以上なにも言えなくなった状況で、振りほどかれない手を握りながら。今や「ふたりきりの時間」になってしまった帰り道をゆっくりと歩いた。
2015/1/14
企画に参加していただき素敵なサン音ありがとうございました!>わしさん、橋子さん
【サン音】ハルモニア
やまなし・おちなし・いみなしの雰囲気モノ
12/6の『音の日』に上げたかったけど忘れてた不完全燃焼SS
サウンドウェーブのスペースに近づいたとき、何かがいつもと違った。
なんだ?この音。
色んな音が混ざってごちゃごちゃしているように聞こえて、なんかの法則があるらしく一定の速度に合わせて連続的に一音一音がまとまりとなって鳴っている。どこから聞こえてくるのかと不思議に思っていたが、ドアを開けるとその発生源が分かった。
たサウンドウェーブが、自身をどこで見つけてきたのか地球製らしいスピーカーに繋げて音を流している。
「聞いたことねえ音楽だな」
「地球ノモノだ」
思わず感想を漏らすと、サウンドウェーブが微動だにせずそう答える。今はなんかを分析しているらしい。俺はその横に座り込んだ。
人間の作った人工衛星やネットワークやらのメディア、またそれらを介して伝達される文化とかやらには相当の情報量が含まれているらしく、サウンドウェーブはたまの作業の合間にそういったものを調べているようだった。
「このスピーカーはどうしたんだ?」
「人間の家屋カラ『拝借』シタ。この星ハ大気の構成物質がセイバートロンと違ウ。音の伝ワリ方が違うナラ、専門の機器ヲ使う方ガ正確ダロウ」
「へえ」
人間に対してこの大きさの機器だ。専門の施設からかっぱらって来ねえと、そうやすやすとどこにでも見つかるもんにも思えねえ。
それなりに本気の暇つぶしって訳か。
「……なんか、ヌルヌルした音楽だな」
「嫌イカ?」
「分からねえ」
ゆったりとした曲が終わると、また別のものに切り替わる。
あんたは?と尋ねかけて発声前に止める。こいつが気に入らないことを自主的にやるわけがない。そういや、音楽に関係する惑星出身だったと風の噂程度に昔聞いたことがあったような気もする。好き、ってことか。
周りのコンピュータには映像データが一時停止のまま放置され、大画面に『和音を宇宙の真理との調和と考え、数学的アプローチを取った。』という字幕が映っていた。映像データも調べていたらしい。
地球はゴタついたぐちゃぐちゃした星にしか思えねえが、数字で表そうっていうのならなんとなく親しみを覚えないわけではない。『調和』、ねえ。バランスの取れた状態ってのが調和なら、愛憎やらスパークと機体やらの関係はどうなんだ?俺はこいつにかなり執着している訳だけどよ――
ふいに隣が気になり、盗み見る。
惚れた腫れたなんぞは調和とは真反対の変化ばかりで狂った状態か。
ブレインの処理が鈍くなり、俺は思考を切り上げる。同時に、今度は人間の声が吹き込まれた曲が流れ始める。またリズムがゆるやかなものになる。
「それで?あんたは地球の音楽なんかで何を調べてるんです?」
「地球デハ、音楽が感情ヲ喚起すると考エルソウダ。思想を呼び起こす国家や軍歌、賛美歌がソノ最タル例ダナ。戦闘ヲ鼓舞スルモノもアルらしい」
なるほど。軍事利用か人間の支配かはしらねえが、手間をかけるものだ。その喚起ってのは俺たちにも通用すんのかね。
サウンドウェーブの流す音楽は人間の言葉で愛情だとかなんだとかを歌っている。暇つぶしにネット回線で調べてみれば、いわゆるラブソングというものらしい。
全く俺自身には響かないのだが、こういうものは人間に愛だの希望だのを喚起させるのだろう。この地球に生きている人間という脆弱な生き物はすぐに死んでしまう。だから子孫を残すためにつがう必要がある。命のスパンが短い生き物が目まぐるしく離れては和して世代交代するのを促すのに、音楽とやらも一役買っているのかもな。
まあ、惚れた腫れたでうだうだやってる俺が愛だなんだについて語る資格はねえ。
さっさと思考を切り上げる。俺が完全に黙ったことで、地球の音楽だけが流れる妙な空間が出来上がった。することもなく、聴覚を澄ます。何の義務も命令もなく、ただただぼんやりとしていれば、漠然とした考えが浮かんでは消えていく。
何でここに来たんだっけなあ。何でこいつだったんだろう。地球のラブソングを聞きながら、サウンドウェーブの隣で、ぼんやりと答えのはっきりしないことを考える。ただ、
『嫌いじゃねえ』。
くだらねえラブソングとやらを聞き流しながら、なんとなく、それだけはっきりと感じた。
2015/1/3 up
マレフィセント (2014)
さすがに騒がれてただけあって新訳『眠れる森の美女』って感じでとっても面白かった!
(けど、あれまで騒ぐレベルじゃなかったかも。)
映像が綺麗で、プロットがけっこう滑らかでなんというかさらさらっと見やすい映画でした。
ディズニーは”Tangled”あたりからロマンス~!というよりは家族愛・兄弟姉妹愛とか、男女の恋愛を抜いても良いコンビを見せる感じ、強い「自分で選択できる」プリンセス(女性)っていうのがよく出るなあと思って見てました。
今回はヴィランだったマレフィセントにスポットを当てて、強さと愛情深さを表したんでしょうか。そういう意味でアンジェリーナ・ジョリーは適役だったんでしょうが、有色人種出てないし、昨今のアンジーの対応的にも「もしかしてこの人もなんだかんだ言ってちょいレイシー?」とか考えちゃった。
いや、戦うプリンセスってよくよく考えれば、私の大好きなアリエルとかベルも恋のために自分から動いてるようなああ。ムーランは文字通り戦ってるし。王子様が人間くさくってお姫様の方がしっかりしててロマンスの前に良いコンビになるのはやっぱり『魔法のキス』、前述のTangledあたりか。
てか、愛情には色んな形態があるんですからね。ロマンスだけが「真実の愛」じゃない。おもしろい解釈だったなと思う。お父さんに愛情をあんま持てなかったのとか、色々と描き足りないところがいっぱいあるけど。
オリキャラのカラスが格好良かったので、正直フィリップ王子よりはディアヴァルのがよかった。まあ、オーロラ姫にはたくさんの選択肢があるから――。
不思議の国のアリスやオズなど実写リバイバルが楽しいから来年も楽しみだ。
*他ブログの閉鎖を機に細々書いていたものの転載*